第6話「処分」
―父の腐食が始まる前に、父を山の奥まで運ばなければいけない。異臭を避ける為だ。
問題は、”どうやって運ぶか”だ。父は重い。
ただ、かなり出血していて、少し軽くなっていた。
今は夏だ。腐食は直ぐに始まる。急がねば。
私は、父の片手を両手でつかみ、引きずろうとした。だが、なかなか進まない。
―そこで私は、いつも父が、私が割った薪を、薪置き場まで運ぶために使っていた台車を使うことにした。台車は薪置き場の隅に置いてあり、それを父の近くまで持ってきて、足を使って乗せた。
そして私が、台車に体重をかけると、台車は「ギ~~」と嫌な音を立てながら、ゆっくりと進んでいった。
―そして、台車をけもの道へと持って行った。
けもの道に入ると、少し揺れたが、案外簡単に森へと入っていくことができた。けもの道にしては整っていて、坂はあったが、そこまで急ではなかった。
なるべく家から離れた場所に、父を捨てたかったから、かなり遠くまで行った。
―父を捨てに行く途中、私は初めて、外の世界をじっくりと見ることができた。台車が重く、ゆっくりと進んでいたため、景色に目を向けることができた。
色々な種類の木が生えている。
所々、動物もいたが、見つけたと思った瞬間、すごい速度で逃げて行ってしまう。どうやって捕まえればいいのだろうか。
虫もいた。カブトムシや、カナブン、タマムシなど、きれいな虫が沢山いた。
しばらくすると、木々の中に、一本だけ、樹液が妙にたくさん出ている木を見つけた。私は、ここにしようと思い、足を止めた。
父は生前、私に胸を派手に切られ、ほとんどしゃべれないような状態で、私に言った。
「何があっても、絶対に、俺の死体を木のそばに置くな・・・。樹液が出ている木なら、なおさらだ・・・。」
それが最後の言葉だった。
だから私は、樹液が出ている木の根元に、父の死体を置いた。
最後の最後で、父の言う通りにするなど、たまったものじゃない。
最後に、父の頭を踏みつけ、父に向ってこう言った。
「自業自得だ。」
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