第13話三章 ピュアとレオンと×××④


***


「おい、起きろ」


 誰かに体を揺り起こされて私は目を覚ます。


「ん。レオン。おはよう」


 私はボンヤリした意識のままレオンの顔に手を伸ばす。

 それをレオンは拒否する事なく自分の手でソッと握りしめてくれた。


「ああ。おはようピュア」


(よかった。顔色はいいな。ピュアが元気そうで何よりだ)


「村の人々は?」


 どこにも気配がないけれど……。


 割れた窓ガラスもスッカリなおってる。これって全部レオンがしたの? ありえなくない??

 魔王ってこんなに最強なの? 呆然とする私にレオンは私の体をペタペタ触る、そしてホッとため息をついて薄く笑った。


「村人達はとっくに村に帰った。寝る寸前にバリアも多少張っておいたのが効いたんだろうな。俺は無傷だし、ピュアもそうみたいだな。よかった」

(ピュアが無事なのが一番だ)


 私はレオンの心の声が嬉しくてニコッと笑う。

 そういえば、ここは私の部屋だ。レオンが運んでくれたのだろう。なんだか恥ずかしいなあ。

 やっぱりお姫様抱っこだったのだろうか。レオンならできそう。

 空ももう明るい。いい天気で気分も爽やかな感じだ。フワ、とあくびが出て目を擦る。

 平和な朝を迎えられたことが信じられない。本当、レオンに大感謝だ。


「悪意が普段から強いものほどすぐに飲まれるんだ、紅い月は。ピュアはなんともなかったんだな」


(さすがピュアは優しい子だからな)


「あー、うん、まあ」


 それは私自身が多分悪意を自分で理解しているだけな気がする。人間の悪意を小さい頃から見てきたから。

 悪意があって当たり前って意識が強くて人に期待しないように生きてきたから、っていう悲しい理由なだけである。

 悪意がないからなんて綺麗な理由じゃないけれど、そういう事にレオンにはしておきたい乙女心。

 ピュアって名前通りだな、なんて思われたいじゃん。実際は純粋なんて名前だけだけれど。


「レオン、助けてくれてありがとう」


「当然だろう? なんでお礼を言われなきゃいけない」


(大切な妻で、愛してる女だろう? 助けなくてどうするんだ?)


 真顔のレオン。


「強いものは弱いものを守るために戦う。普通の話だ」

(それに愛する人もな)


 不思議そうに私を見て首を傾げるレオン。


「レオン、魔王のイメージと本当違うよねー」


 私はしげしげレオンを見ていう。だって弱気で、内気で意地っ張りで可愛くて正義感溢れる魔王、って普通想像しないよ。


「お父様もそういう人だったぞ」


(そして何より俺より立派な方だった)


 あ、レオンが無邪気に笑った。久しぶりの花丸笑顔に私も釣られて花丸笑顔。

 

「本当は俺もおかしくなるかと思って怖かったんだ」

「私だって怖かったよ。でもレオンがおかしくなっても私は見捨てたりしないから、大丈夫だよ」

「! 俺も、だ」


(ピュア、俺をそんなにも思って……)


 感動した顔をするレオン。さっきの言葉で私も感動したからね!

 そう思った時。レオンの体がガクンと揺れた。


「!? レオン!?」

「スゥ」


 そういえばレオンの目の下、クマがあったな。寝不足なんだなあ。

 仕方がない、私のタオルケットを貸してあげて、もう一度私も横になろう。

 おやすみ、レオン。



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