第34話 人は自分の思い通りにはならない。

 よく、どうしてこんなにあなたのために尽くしたのに、報われないの? あなたは私のことをちっとも理解していない。


 なぜ。

 どうして?

 そんなコメントを見かけます。


 そりゃそうでしょう。

 所詮、赤の他人ですから、自分を100%理解するなんて有り得ません。夫婦だって同じことが言えると思います。昨日まで他人同士だった2人が1つ同じ屋根の下で暮らすわけです。


 兄弟だってよくみりゃ性格も個性も全く違うわけですから、赤の他人様に自分を100%理解してもらうのは、ナンセンスなような気がします。


 私がそのことに気付いたのは、結婚してから。

 もっと言えば、子供ができてからでした。


 0歳児、1歳児の年子は、そりゃあもう泣きたいときに泣きます。

 それが例え夜中であろうと眠りの深い明け方であろうと、赤ん坊に泣く時間の指定をすることはできません。


 これをするな。

 こうしちゃいけない。

 そう言ったところで、親の思い通りにはならないのが赤ん坊であり、赤ちゃんです。


 これだけしてやったのにとか、こんなにあなたのためを思って。

 そう思ったところで、赤ん坊は天上天下、唯我独尊です。我が道を行きます。


 もちろん、こうなってほしい。

 こう育てたい。

 親のしつけ、願望はあって当然です。

 そのための教育なわけですし、しつけなわけですから。


 日本では映画を作る際、これをしちゃいけない。

 こうしないでくれ。

 ここではけして涙を見せないでくれ。

 ○○しないでくれ。

 この注文が多いらしいです。


 アメリカでは、こうすればもっとよくなる。

 だからこうしてほしい。

 もっとこうして。

 ○○したらどうでしょうか?

 足し算で物事を考えるらしい。


 もっとこう笑った方が笑顔が素敵に見えるとか。

 涙はこう見せると表情が豊かに見えるとか。


 引き算ですべての物事を教えようと試みるか、足し算でもっとこうした方が素敵だよって褒められて育てられるか。

 この違いは大きいように思う。


 恋人を自分色に染めようと躍起になり。

 自分の妻を下僕のように家事専門の女中のようにしつけようとするのは、やはりナンセンスなような気がします。


 洗濯物はこう畳むのが正しい。

 茶碗を洗うときの音がうるさい。

 便所でトイレットペーパを使いすぎる。

 風呂は水がもったいないので30分で終わらせるべきだ。

 ここまでくると、もはやいやがらせの領域に入ってくる。


 もっと優れた部分、個性を認め、長所を伸ばす作業をした方がよっぽど効率的で、魅力的に妻も振る舞うのではないかと思います。


 子供は親の思うようには育ちません。

 こんなに、あなたのために思ってとか、こんなにあなたのためにしてあげたとか。


 そういうのは子供が親になり、やがて所帯を持ち、子供を授かってから初めて気付くことです。


 子供は親の道具でもありません。

 ある一定の年齢まで子供をだませても、やはりどこかで自我が目覚めてくるでしょう。


 人格があり、性格があり、個性がある限り、子供は子供のやりたいよう、なりたいように振る舞うのが自然なのです。


 レールを踏み外さないよう、守ってあげるのも時に必要だと思います。

 取り返しのつかないことになってしまったら、それはそれで困るからです。


 子供が自ら我が道を選択しているようで実は親が方向性の舵取りしているみたいな高度な技が、そこには必要になってくるのかなと思う。


 個性、適性にあわせて、子供を導いてあげる。

 この導くという言葉が大事なキーポイントであるような気がします。


 強制でなく、意志を尊重しつつ、その気にさせ、そして実行させる。

 そこを見誤ると危険だと思う。


 子供は強制的に勉強をやらされていると思うと反発するでしょうし、自分のことをわかってくれないと悲観する。うまく導いてあげることこそ、親子関係では求められるのかなと思う。

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