Part2 覚悟
#1
ピュリファインのリーダー格の男に刀剣の刃を突きつけられたマイク。訳も分からず腰を抜かしているが自身も敵として認識されている事には気付き震えた。
震えた理由は二つ。一つ目は単純にビヨンド同様殺されるかも知れないと思ったから。そして二つ目は自分の事をダーティアと呼んだからである。
「や、やめ……」
恐怖とショックのあまり上手く声が出せない。本当にここで終わりを迎えてしまうのだろうか。
「ん? 今のビヨンドの契約者ではないのか……?」
ピュリファインの男は今倒したビヨンドの消え行く骸とマイクを交互に見て呟いた。
「しかしダーティアである事に変わりはない、本部まで連行する」
そう言って何か特殊な手錠のようなものを取り出すピュリファインの男。それをマイクにはめようとするがそのタイミングでマイクの恐怖がピークに達した。
「うわぁぁぁ!!」
火事場の馬鹿力というやつなのか走り出す事が出来たマイク。そのまま逃げ切ろうと必死に来た道を戻る。
「……変異したばかりなのか、可哀想に」
マイクの事情に気付いた男の所へ仲間がやって来る。
「おうレオン、何かあったか?」
大柄な男性隊員が彼の事をレオンと呼ぶ。そして一緒にいた女性隊員もレオンに対して言った。
「早く浄化しないとまた濃度高まって面倒になるよ?」
そう言われるレオンだが二人に対してこう返した。
「ガイナ隊長、ニーナ。ダーティアを見つけたんで浄化は任せます」
大柄な男性はガイナ、女性はニーナと言うらしい。
レオンは汚染区域の浄化は二人に任せてマイクを追う事にした。
「はぁっ!」
足に力を込め勢いよく駆け出す。
「あっ、ちょっと!!」
ニーナはレオンを止めようとするが間に合わなかった。
「もう! ダーティア一人より浄化の方が優先度高いのに〜!」
「やっとエリア13を浄化できるってのに、あいつダーティアの事となると周り見えなくなるよな……」
ニーナは頬を膨らますがガイナ隊長は何とか割り切って浄化に専念する事にした。
・
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必死に逃げるマイク。しかし汚染区域を出たら苦しくてマトモに走れないため汚染区域内で何とか逃げ回る。
「はぁっ、はっ……!!」
しかし背後から迫る音はすぐに近くなる。レオンはすぐ側まで迫っていた。
「ひっ……!!」
そして回り込まれてしまう。
「悪いようにはしない、大人しく着いて来るんだ」
またもや刀剣の刃を突き付けて来る。脅しのつもりで実際に斬る気は無いのだがマイクはパニック状態のため判断する事が出来なかった。
「あぁっ、やめてくれぇっ!!」
「だからっ、悪いようにはしないって!」
慌てふためくマイクを何とか落ち着かせようと一度刀剣を地面に置いた。そのタイミングを見計らっていた者がいるとも知らずに。
「よっしゃ今だっ!!」
その正体はガスマスクを着けたダーティア。マイクとレオンの間に割って入り背後のゲートから巨大な腕を出現させた。
「おらぁっ!!」
その腕は多大な土煙をあげレオンには目眩しになった。
「くっ、何故コイツがエリア13に……⁈」
そして土煙が晴れるとそこには崩れた地面だけが残っておりマイクや乱入して来たダーティアの姿はなかった。
「逃したか……」
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そして乱入したダーティアはビルの上を走りながらマイクの体を抱えていた。
「もうすぐ汚染区域を出る、ガスマスク着けろ」
そう言ってマイクの口に無理やりガスマスクをはめる。
「だ、誰……⁈」
まだパニックが完全には治まっていないマイク。見知らぬ男に連れられているためまだ恐ろしかった。すると男は一瞬だけガスマスクを外し顔を見せた。
「俺だ俺、スタンだよ」
その正体はマイクのガスマスクを不本意ながらも外させダーティアにしてしまった張本人であった。
「ったく危なかったな。もう仲間が捕まるの見るのはごめんだぜ、それも俺のせいで……」
スタンはやはりマイクをダーティアにしてしまった事を悔やんでいるらしい。
「ごめんな、俺のせいでお前の人生めちゃくちゃにしちまった……」
あれほど憎んでいたダーティアが自分に謙り謝っている。仲間になってしまったという辛さともう一つ何か複雑な感情が渦巻いているのが分かった。
「何なんだよ……」
ただマイクはそれしか言えない。そのままスタンに抱えられ先程のかつて住んでいた自宅のある汚染区域に戻るのであった。
つづく
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