ニヤリ
「あああ!勇者の右手の骨が粉砕した!!!」
「あああ!勇者の右腕の骨が粉砕した!!!」
「あああ!勇者の左手の骨が粉砕した!!!」
「「「あああ!勇者の左腕の骨が粉砕した!!!」」」
右肘を樽の上に置いて魔法使いと向かい合っていた勇者の脳裏に、直近の未来で待ち受けているだろう、拳戦士と僧侶と魔王の過熱した実況が駆け巡る。
まあ、僧侶がいるわけだし、手だろうが腕だろうが骨が粉砕してもすぐに治療してもらえるので、痛みを我慢すればいいだけの話だ。
不敵な笑みを継続したまま、勇者は右肘を樽の上に固定させて、やおら魔法使いの手に己の手を近づけて、魔法使いも左肘を樽の上に固定させて、やおら勇者の手へと己の手を近づけた。
少し時間をかけ過ぎじゃないかと思うくらいにゆっくりと。
そうして、親指の下でふっくらしている母指球が一度軽く触れ合っては、かすかに離れて、がっちり手を組み合わせた。
瞬間。
雷が直撃しては、刹那にして脳天から指先まで駆け走った。
「あ。ごめん」
「あ、うん。いや。そうだよな。手を合わせた瞬間に腕相撲は始まってんだ。油断した俺が悪い。一回戦は俺の負けだ」
魔法で雷を呼び寄せては勇者に直撃させた魔法使いは無意識でしたらしく、勝負は無効にしようと言ってくれたが、すぐさま僧侶に回復魔法をかけてもらって丸焦げから復活した勇者はそう言って、二回戦を始めようかと、ニヤリと笑ったのであった。
(2023.12.19)
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