バチバチ
「バチバチやめてくれよ」
「まだ何も言ってないよ」
「まだ何もしておらん」
「うんそうだねごめんね」
魔王城から城へと帰る途中から馬車に乗って揺られること、五日間。
城へと帰還した勇者は王への謁見の場にて、魔王の助命を嘆願すると王から言われたのだ。
勇者が死ぬまでの期間のみ、その命を永らえることをゆるす。
その間、勇者が責任をもって、魔王を見張り続けるべし。
それが嫌ならば、すぐに魔王を処刑せよ。
「これから毎日王の元へ足を運んで、私が死んでも生きることをゆるしてもらえるようにするから」
「別段、あのような者にゆるしてもらわずともよい。敗者であるわしはただ勝者であるそなたの言に従っておるだけだ」
「求婚するんだろう?」
「敗者が求婚などできるわけがなかろう」
「まあ、その気持ちはわかるけどさ」
「そなたに負けて闘志も消えた。死に体だ」
「だったらまた甦ればいいわけですね。暴れ回るのは勘弁ですけど」
「おう。俺と一緒に居酒屋をやろうぜ」
拳戦士と僧侶は両側から魔王の肩に腕を回して、今度はこっちの勇者とあっちで一緒に飲もうと連れ出したのであった。
魔法使いによって人間へと変化させられた魔王と拳戦士と僧侶が、祝賀会の行われている広間へと向かっていく姿を見えなくなるまで見送った勇者は、魔法使いに静かな場所に移動しようかと誘ったのであった。
(2023.12.13)
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