最終話-7 「だから!!」
むかえうつ竜。
竜の口から
対する魔王が魔術を発動。
「《
ギァィンッ!
耳を引き裂くような高音をたて、竜の吐いた光線が、あらぬほうへとハジかれた。
すぐさま魔王は竜に接近。手の中に魔力の光をふくらませ、竜めがけて投げつける。
「《光の矢》!」
バゥッ!
これは狙いたがわず竜に命中。
だが竜は、なにごともなかったかのように翼をはばたかせ、魔王へと
ギャッ! ギャアッ! ギャギャッ!
その全てを《風の翼》による高速飛行でくぐりぬけながら、魔王は小さく
(《光の矢》クラスを
これは、
「よかろうっ!」
魔王が撃った次なる術と、竜の
*
たまらないのが地上で戦っている者たちである。
竜と魔王が撃ちおろした
魔王城はくだけ、城壁はくずれ、反乱軍も魔王軍も吹きとび、倒れる。
だが、味方を巻きこむことも気にせず術をバラまく魔王に対して、竜は、
となれば、
流れ弾で体勢をくずしたところへ、反乱軍のとてつもない大軍におそわれる。
持ち場を
*
そのころ、魔王城の
「イヤだ、イヤだっ!
死にたくない!
なんでこんなことに……私が何をしたっていうのよぉ!」
「それが分からねえ、ってのが全てを
「ザザン!? なんだきさまっ……何をしている!?」
「ハッキリ言わなきゃ分かんねえか?
魔王軍は、もう終わりだよ。
俺も、あんたと
「なにを言うか!
きさまは魔王様の強さを知らないんだ!
あのおかたが人間ごときに
「お前、言ってることとやってることが
まあいいけどよ。
たしかに魔王は強いよ。人間の
あのていどの数、魔王なら1人で
しかし、部下は
「イヤよお……
私、そんなミジメなイナカで、あんなバカのご
ね……ねえっ! あなたなら!?
あなたなら
私もあなたと行く! ね……いっしょにいさせて。守ってくれるなら、私を好きにしてもいいのよ……?」
リリが、ザザンに身をすりよせる。
大きな大きな胸のふくらみが、ぐにゅっ、とザザンの腕に押し当てられる。
ザザンは、リリをかき
そして、
「ん……♡ ぅんっ……♡」
あえぎ声をもらすリリに……
ズプッ!!
ナイフを、ふかぶかと突き刺した。
「ん!? ……あっ……? え……」
ずるっ……と、くずれ落ち、倒れふすリリ。
彼女の
「は! 女なんか、いくらでもいるんだ。わざわざ
最初からザザンの目的はこれだったのだ。
いままでさんざん
これで少しは気も晴れた。
ザザンは、鼻歌を歌いながら、
(魔王軍のテッペンに立ちたい、なんてのも、ウソだよ~!
そんなメンドくせーこと、俺がやりたがるわけねーだろ?
さっすが俺! 抜け目ないね~……)
などと、ご
そのとき。
彼の首すじに、ぽたり、と焼けた
「ぅ
飛びあがるザザン。いったいなんだ? とばかり、天井を見あげれば……
天井の石材が、円形に
あれは……?
あれは……
あれは……!
「あああああああああああああっ!?」
竜の
*
ゴッォォ……ン……
もう何度目だろう。爆発の
ころびかけながら、どうにか
ヒメナイトが
外で戦闘が行われている間、ナジャはひた走り、ヒメナイトを探していたのである。
(どこ……? どこにいるの、ヒメ様っ……)
いくつめかも分からない、
と。
「ガアァッ!」
いきなり聞こえる獣の
部屋の中には、狼に
驚きすくみあがるナジャに、狼が飛びかかってくる!
「うわあっ!?」
ナジャは
その上へのしかかる狼。
ナジャは……
「負けるかァーッ!!」
とっさに左
目を白黒させてとまどう狼。
その横っ
狼は、ビクンと震え、ナジャの上によろめいて倒れた。
あわてて狼の死体を押しのけ、立ちあがって逃げだすナジャ。
(ヤバいっ! 今のはヤバかったっ! 死ぬかと思ったーっ!)
ズキン! と左手に痛みが走る。
狼の口に手を突っこんだとき、
だが
血の
今、この瞬間も、ヒメナイトは苦しみ続けているのだ。
(ヒメ様! ヒメ様! ヒメ様っ……)
息が乱れる。
涙がこぼれる。
「ヒメ様ァーッ!!」
腹の底から
と。
目の前に広がる、
いた。
大きな石柱。
たれさがる
ヒメナイト!
「ヒメ様あああああっ!」
ナジャが叫んだ、そのときだった。
*
竜がキリモミ回転しながら空中に
魔王の魔術が狙いをはずして、後ろにあった
竜は強い……だが魔王はそれ以上に強い。
はじめこそ
とにかく攻撃が激しすぎて、
戦いが長びけば長びくほど、
いまや、竜は完全に
(ころあいだな!)
魔王はニヤリと笑みを浮かべ、
魔王の手の中に、これまでとはケタ違いの
「ヌゥゥゥ……
ァァァァァ……
ァァァアアアーッ!!
受けるがいい!
魔王ムゲルゲミル最大最強の究極魔術!
《
瞬間。
カッ……
と光が走り、
ゴッガァァァァァァアアァアアアッ!!
かつてない
《
それは人類が開発した攻撃魔術の中でも最強とされる破壊の術。
その
欠点はただひとつ、術の準備に時間がかかりすぎること。
だがこれが直撃したなら、たとえ竜といえど……
ドズ……ン……ッ!
重い音を響かせて、竜が、地面に
その
魔王は肩で息をしながら、ヒュウッ……と風をきって、竜のそばに着地した。
そのとたん、がくっ、とヒザをつく魔王。
(ち……!
《風の翼》を長く
術式の魔法焼きつけが起こっているな。
しばらく《風の翼》は使えんか……)
さすがの魔王も、かなり
だが……
竜は倒した。
残るは、反乱軍の、ろくに
それが、白い
「あんなもの、
はぁーっはははは!
バカどもめ!
部下が何人死のうと関係ない。
それを……今から
魔王の手の中に、次なる攻撃魔術の光がともる。
次の瞬間、魔王がはなった
「弱い! 弱いなあ人間は!
はっははは! はーっははははは……」
*
「ヒメ様ァっ!」
ナジャは叫んで、駆けだした。
ナジャは走った。泣きながら。
石材を
(わかるよ、ヒメ様)
そうだ。あの日から……
ヒメナイトと出会ったあの日から……
ヒメナイトと並び、ヒメナイトと歩み、ナジャはずっと、考えていた。
なにが世界をゆがめるのか。
なにが彼女を苦しめるのか。
(つらいよね。
苦しいよね。
自分のことが、好きだよね。
なのに自分が、イヤだよね……)
全ては、この、小さな小さな
でも、
その
そのとき……
ナジャの目の前で、床が完全に
ヒメナイトがつながれている石柱を残して、床石が下へ落ちていく。ナジャの
しかし……
……いや。
「だから!!」
ナジャは走った。前へ走った。走って
「旅をしようよ!
どこまでも……いっしょに!!」
瞬間。
ヒメナイトの
「その剣で――
お前は誰を守りたい?」
まぶたを開く。ナジャがいる。ナジャが
それを見た瞬間……
ヒメナイトの目が、燃えたッ!!
「ナ……ァ……ア……ジャァァァァアアアアアアアッ!!」
ダンッ!!
柱を
落下するナジャを空中で
*
ドッガァァアアアッ!!
突然、
そこには、完全に
その、もうもうと立ちこめる
立ちあがる
「なにィ……?」
魔王の
まるで
ヒメナイト、復活!!
(つづく)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます