幕間 魔王ムゲルゲミル
幕間 魔王ムゲルゲミル
魔王城――
遠く北の
そこにたむろするのは、魔族の
その不気味なうめき声が、昼となく夜となく、あたりにとどろき続けているのだ。
そんな魔王城の奥……血の色をしたじゅうたんと、ビロードのカーテンにかざられた玉座の間。
そこに、はいつくばって震える魔族兵の姿があった。
「
部隊は壊滅し……補充のあてもなく……」
「それで?」
ひれふす魔族兵の頭のそばに、カッ! とハイヒールの靴底が叩きつけられた。
彼女こそは魔王軍のナンバー2、
「
で? 今後どうする?」
「はっ……それは、あの……」
「失敗したならしたで、その後の
ええ? どうなんだ、きさまは?
まさか、まったく何も考えてません、なんて言うつもりじゃないよなあ!?」
「いえっ……それは……え、あのっ……」
「『あの』ばっかりでは何も分からんだろうがッ! そういうのを
「ヒッ! ヒィッ……!
あのっ……ィィッ……!」
そこへ、
「リリ。そのくらいにしておいてやれ」
低く、重い、男の声が割って入った。
声の主が、玉座をおりて、歩み寄ってくる。
リリがこれほどの敬意を示す相手……
言うまでもなく彼こそが、この城の
魔王ムゲルゲミル、そのひとである。
「何者だ? バルグルを倒したのは」
魔王じきじきの
「はっ……私は直接見ていないのですが……
大型魔獣8頭と
どうやら敵は、あのヒメナイトらしく……」
「ヒメナイト?」
魔王が、ぴくりと眉を動かす。
「聞いた名だ。
確か、ツィスバルべニェンの戦場で、我らの同胞3千人を
ふ、ふふ……!
分かった。さがってよい」
「ははァーッ!」
魔族兵は、顔面を床にこすりつける勢いで頭を下げ、そそくさとその場から
逃げるように去っていく魔族兵の背を見送りながら、
天性のサディストであるリリとしては、まだまだ
もっともっとネチネチ追いつめ、いいオトナが泣き出す
くっ、くっ、と、ふくみ笑いが魔王の口からこぼれる。
「面白い……ふっふ、面白い、な」
「魔王様? ごきげんでいらっしゃいますのね」
魔王は彼女の腰を抱き寄せ、首すじへ、ちゅ……と
「機嫌良くもなろう。
何隊か
「はい」
「楽しいぞ! こんなに胸おどる相手はひさびさだ。
第2話へ、つづく。
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