第6話 「結果的には、すごく良かったな」

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お昼ご飯を食べ終え午後の授業がスタートする。

午後の授業は、ご飯を食べた後だから無性に眠くなってくる。「ふぁ」と思わず大きなあくびをしてしまう。

そうだ。こういう時は、とりあえず羊を数えよう。頭を使うと眠くなくなる気がする。だから、羊を数えると逆に眠くならないというのが俺の理論だ。俺は、羊を数え始める。1、2、3…


「…くん」

ん?何か聞こえる?

「湊音くんってば」

耳元で羊以外の名前が聞こえる。ん?羊以外?俺は、違和感を感じ目を開ける。

「あ、起きた。よく寝ていましたね。もう授業終わりましたよ」

望月さんが、耳元に小声で話しかけてくる。不意に耳に息が当たる。

「起こしてくれてありがと。でも、耳は弱いから勘弁してくれ…」

さっきから、望月さんの息が耳元でくすぐったい。

「あ、ごめんなさい。あんまり大きい声で起こしたら可哀想かなって思って。ぐっすり寝ていたから」

そういえばこの子、天然だった。悪気はなかったのだろう。耳が赤いのがバレていないといいけど。世の男は、そういうことをされると簡単に勘違いします。ただでさえ可愛いのだから気をつけて欲しいと思う。

「いや、大丈夫。起こしてくれてありがとう。望月さん」

どうやら、俺は50分ほど寝ていていたらしい。そういえば、羊を最後に数えたのは10匹くらいのところだった気がする。逆に眠くならない説は立証されなかった。

「矢野ー。ちょっと、手伝ってくれ」

なにか頼み事があるらしいく、担任の先生が俺のことを教団から呼んでいる。

「悪いが、この資料を職員室に運ぶのを手伝ってくれ」

隣には書類の山がある。

「えー」

正直、早く家に帰りたい。

「えーじゃない」

「わかりましたよ…」

先生の頼みを断ることはできないので、仕方なく手伝うことにした。

先生は、隣にある書類の山を大雑把に分けて、俺に渡してくる。重たい。

「先生、俺の分が少し多い気がします」

「つべこべ言わずいくぞ」

うわ、この人結構適当だな。重い荷物を持ち教室を後にして、先生と職員室に向かうため並んで歩く。

そんな時、先生が口を開く。

「矢野、お前な…初日から爆睡とはいい度胸だな」

俺に頼み事をしたのはお叱りをするためらしい。今回ばかりは、俺が全面的に悪いのでとりあえず謝っておこう。

「それに関してはすみませんでした。お昼の味噌カツが美味しすぎました」

「味噌カツ?お前は何を言っているんだ。まあ、わかっているなら良しとしよう」

もっと怒鳴られるかと思ったけど、案外穏便に終わった。

「えっと、ちなみに今日何しました?」

寝ていたせいで授業の内容が何も入っていないので、恐る恐る聞いてみる。

「さっきは委員会決めをしたぞ。」

委員会決めか。正直どんな委員会でも、良いから別に支障はない。

まあ、ある程度面倒くさくないものが良いとは思う。面倒くさいことは嫌いだ。

「矢野は爆睡していたから図書委員会になったけど文句言うなよ。望月と一緒だ」

「文句なんて言いませんよ。俺が悪いですし」

望月さんと委員会が一緒とはラッキーだ。仲の良い人と一緒とは素直に嬉しい。

それに、寝ていた俺が悪い訳だから、文句が言えないのは当たり前だ。

「ちなみに、この学校の図書委員会、放課後に活動があるから頑張れよ」

そう言って、先生は書類を俺の手から取り職員室に消えていった。

やっぱりさっきのは、前言撤回だ。この人が悪い、俺は悪くない。学校に少しでもいる時間を減らしたい俺からしたら、放課後に活動があるのは一番避けたかったことだ。とはいうものの、どう考えても俺が悪いのは一目瞭然だ。

寝なければ良かった、そう後悔した午後の授業終わりだった。

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