Iタズラ心

 奇跡的にあった手頃な布を貰った。全裸は見られた。

「もうちょっと早く言ってくれると助かる……」

 気づかない僕もなかなかのもんだが。

「…………シム。本当に受け入れてくれるの? 一緒に、背負ってくれるの?」

「言うに牙生えてそれかよ。そのくらい背負ってやるよ、世界くらい重くもない」

 なんの目標もなく、僕は生きたかった。

「俺を信じろ」

 正義でも素朴でもない、貪欲に格好付けて嘘を吐いて嘯いて適当なこと言って取り繕って。

 異端で不快に滲み出る。

「でも……」

 見た目は主張が少なそうなのに、でもが多いな。

「シムはここら辺のことを知らないっぽいし、なんて言うか、オーブのこともあんまり知らない……でしょ? だから、その説明と実物を知ってからでも、いいと思って」

 むむむ……

「……まあ、確かに。だが俺は絶対に曲げんぞ。お前を助けると決めたからな」

 ここまで言っておいて信じられないと思うけど、救いたいのも本当なんだ。

 本当だけど、情熱が無くって。

 目の前にその人がいるのに、僕は真剣に捉えていない。

 正眼に構えてない。気も色も悪い。

 そんな悪い癖だ。

「とりあえず、こっちに来て」

 ダンジョンの奥へと進む彼女に、言われるがままついていった。

「おい、どこに案内……」

 奥に見える台座から、それを取り出してきたのだろう。彼女の両手に乗ったそれは、橙に輝く丸い宝石だった。

「これが、オーブだよ」

 神聖は無慈悲を伴って、その壮大さはまるで蹂躙のようで、触れたらイケナイものだと、考えるまでもなくわかってしまった。

「説明、するね」

 世界を、脅かしてしまった。

「これは見ての通り、緑のオーブなんだけど──」

「いや待て待て、どう見ても橙だろ」

「……へ?」

 そのオーブは橙に輝いている。

 緑要素は、見つからない。

「…………?」

 色の名称が違うのか? 日本語が通じているのに?

「……まあいい、続けてくれ」

「……えっと、オーブは持っているだけでも魔力が無尽蔵に近い量になるの。もし壊れれば、とんでもない爆発を起こすよ」

「……どのくらいだ? 人を乗せた優秀な馬が一時間走った距離を超えるか?」

 範囲を知っておきたい、場合によっては有効活用できる。

「いや……そこまででは無いかな。巻き込めてもその半分」

 大体35km前後が範囲か。

 確かにそんなオーブ、危険極まりない……だが、世界ってほどでもないだろ。

 まだ裏がある。

「そんなオーブが世界の六つのダンジョンに一つ一つある」

「つまりオーブは六つ、確かにそんな爆弾は保管した方がいい」


 だが、世界とは釣り合わない。

「けどよ、それ全部揃えたら──────」

 背中に、鋭い痛みが走る。

「は」

「シムっ!」

 知らない女の声、二つがする。

「二対二じゃ自信が無いんで、後ろからやらせてもらったぜ」

 意識が、薄くなる。体が無気力に倒れてしまう。

 激痛によるものではなかった。



 荘厳な音色。金楽器やらが音を重ねて、旋律となる。ソプラノ歌手の神聖な祈りの声が、身体全体に、細胞に入り込む。


「ただの盗賊だ」


 音の色合いは淡く鮮烈で、


「タイミングが……悪かったね」


 ゆったりとなだれ込むそれは、


「なにがおこ────?」


 羊水に浸かって、ぷかぷかと浮かぶ。あんな気持ちを思い出す。


 それは、二度目だった。


《資格ある者よ、世界を救え!》


 今まで味わったことの無い痛みが走ったまま──意識が途切れた。



「いっっっ…………」


 何が起こった? 何も分からん。盗賊? 何? なんだ?


《やぁ、やっと会えたね? 伊深シムくん》


 地獄みてえなセリフが頭に響く。目は開きっぱなので、それを言った奴が視界に入る。

「……??!」

 目の前に広がる景色は、こたつ、クッション、テレビ。

 それと、黒い犬だった。

「自称神じゃない!?」

《なんだいきなり》

 口調も完全にそうだし、空間もそうだと言うのに、黒い犬!?

「誰だお前! というかなんで僕は生き……いや魂の状態になってんのか。じゃあ今僕の体はどうなって」

 肉体は……多分死んでない。金属球の方がやばかった。

 力のせいか、骨まで到達しなかった。

《質問が多いな。ひとつひとつ処理させてもらうよ》

 完全にシチュエーションも被せに来てるのに。

《私はメップ。君だけのアドバイザーさ》

「アドバイザー……?」

 異世界のアドバイザーってことか? 出るタイミング遅くない? お前が出ないから転がり落ちて(中略)背後から刺されてんだぞ?

「そう、アドバイザーさ。君を現実世界に返すアドバイザー」

 …………いや

「おまえ自称神だろ」

《……なんのことかな》

「シラを切るなよ、山野先生に化けてる時点で変身能力があるのは分かってんだよ。何より口調が完全に同じだ」

 状況も行動も全く同じ。別人を装ってるのは、僕が殴ったせいか?

「……わかった、お前あれなんだろ。身体を異世界に行かせるのはアウトだけど、異世界で作った身体に僕の魂を入れるのはOKだよね? って屁理屈こねたんだろ。現実に影響のないにな」

《…………》

「なんとか言えよ、僕が狂気に陥っててどんな気分だった? ん?」

 僕は立ち上がって、メップの位置と自分の位置を測り、少し近づく。

「蹴る」

「いやいやいやいやちがうんだよぉ! 別に騙そうとか裏切ろうとかそんなことは考えてなくって、ちょっと聞いてくれよ!!」

 早着替えではなく早変身。瞬き一つしなかったのに、もう既に山野先生キトンバージョンで足に引っ付いている。

「やっぱそうじゃねェか! ぶっ飛ばすぞ自称神! 知人の次は犬になりやがって、てめえ神じゃなくて悪魔だろッ!!!!」

「うわぁぁっ! 悪魔でいいから! 悪魔でいいから話を聞いてくれよ!」

 わんわん泣いて縋られたので、とりあえずは拳と頭と足を引っ込める。

 次は噛む。

「で、なんだよ。男子高校生に金属球を落として失神させ、帰るまで何年もかかるかもしれない別世界に行かせようとし、寝たところを襲って実際に行かせて、そのせいで殺してしまった言い訳は」

 失神がすぎる。

「神なのに何してんの?」

「いや………………はい。すみません」

 まぁ死刑にまでは持ち込めるか? 僕の手で。

「私が、君を異世界に呼んだのは……両方の世界を救ってもらうためだよ」

 両方? こういうのってありがちなのは異世界じゃないのか?

「両方ってことは、僕たちの世界もか?」

「うん。ある魔法陣を壊して欲しいんだ」

 全く話が見えない。長い。殴りたい。

「もういいか……?」

 特にそんな気は無いが拳を握り締める。

「血の気多いな! 野蛮人!? しっかり現代人だよね! 天から見る限りそんなんじゃなかったと思うけど!」

「日の本で生きてんだよ、天から見てたって見てたらわかるだろ。友は唯一だぞ?」

「性格悪いからいなかったのかよっ……!」

 性格悪くて嘘つきで空気読めなくて喧嘩っ早いのだ。

 ──────友達1人を舐めるな。

「敬意を持つのは先に生きる者と家族とノノちゃんくらいのもんさ、それ以外はチンピラスタイルなんだよこっちは」

「口調も友達1人も全部格好付けであれよっ! なんでちゃんと口も性格も悪いんだよ!」

「なんでそんなやつ選んだんだよお前は」

 僕を選ばなきゃ殴られることもなかっただろうに。もっと主人公っぽい奴を選べよ。

「君と数人しか素質がなかったんだよ」

「素質?」

 物語に一番合っていない人物を選んでおいて素質と言ったか?

 目標は無いが生きたいから生きるために何でもする、そんな奴サバイバルで映えるかどうかってなもんだろ。

「魂が抜けてもまた入れる人間さ」

「えっ、お前が何とかしてるんじゃないのか?」

「ううん。私にそんな力はないよ」

「神なのに何ができんの?」

 そもそも男子高校生を攫ってる時点でそれしか能力がないのか? 迷惑な話だ。

「世界に介入できない……って言うか、介入したら駆除されるっていうか」

「やっぱり悪魔じゃねーか」

 神なんだから神の手で勝手にどうにかしてくれよ。僕の関係ないところでやってくれるならどうでもいいからさ。

 それでも僕を使うなら、どうなっても知らないぞ。

「……で? 魔法陣を壊して欲しいんだっけ」

「ああ、そうだよ。話を聞いてくれる気になったかい?」

「じゃないと進まなそうなんでな」

 聞きたいことは幾つもある。僕の身体がどうなっているのか、僕はいつ帰れるのか、スキルはなんなのか、オーブはなんなのか。

 聞くしかない、順当に。

「……その魔法陣は元々、無理矢理異世界に来訪した者の跡なんだ。それがまだどっちの世界にも遺ってる」

「無理矢理異世界に来た奴……ってことは」

「そう。その魔法陣は君の世界と異なる世界を繋げる」

 世界を繋げる大魔法。そんなものが本当にあったら、今頃問題になっているんじゃ?

「壊すとして、なんで今まで壊されてないんだよ」

「どうやら神格化してるみたいなんだよ、異世界住民が」

「……それ、僕が壊したらやばいやつだろ?」

 自称神の癖に、皮肉的で悪魔的、何かを欺く笑みをそいつは浮かべた。

、だ。シムくん、契約をしよう」

「な……」

 何言ってんだこいつ。

 絶句する。呆れて仕方がない。

 お前にそんな選択肢あるか……? ないだろ。

「君は現実世界でやりたいことがあるから異世界転移を拒否する。これに間違いはあるかい?」

「……いや、合ってる」

 僕の人生計画が大きくズレるのも、未知の世界に行くのも怖いから嫌だ。それは間違いない。

 現実世界に満足しているのに異世界に行く理由なんてない。

「なら、。なんていかがかな?」

 悪魔の甘言は、どうしてここまで滲むんだろう。

 だが、いいのだろうか。

 まだ人でなしから戻れるかもしれない。

 いや、こんな逡巡をしている時点で、もう遅いか。

「いいね。面白い」

 ここにいるのは、悪魔だけだ。

「契約内容は簡単。君は魔法陣を壊してくれ、そうすれば異世界の夢はクリア。そして私は度々、魂をここへ呼ぶ」

「ああ、契約はそれでいい」

 悪魔と悪魔の契約が、僕らの間で結ばれた。

「もし死んでも、異世界の肉体が死ぬだけ。魂は現世の身体に戻れる」

 どんな失敗も、全てが夢となる。

 責任の生じない世界。

「君の隠されたスキルはテイム。そして、異世界の方で眠れば現実世界で起きる。現実世界で眠れば異世界の方で起きる」

「テイムって、動物を従える奴だよな。発動条件は?」

「手を向けてテイムと唱えるだけ。長なら傘下も、親なら子も従うよ。基本的に動物から愛されやすくなる、意思疎通はもちろん獣のそれだけど」

 簡単な命令ならできるってことか。手を向けてテイム、遠距離でも行けるのか?

「眠っている方の世界は?」

「時間は流れるが、現実世界と異世界は時間の歪みがあるからね。心配いらないよ」

 時間の流れもそういう感じか。

「……、ゲームはなるべく早くクリアしたいんだよね。タイムアタックしてるんじゃないけど」

 異世界転移1日目。

「異世界攻略編、始めようぜ」

 時間の流れの違う空間を最大限に使い、悪魔と対策を講じる。



 さぁ、夢を終わらせにかかるぜ。


「シム! 私、シムがいないと………………」

 ムク・アルカーマが、倒れている僕に寄り添っている。泣いているせいで、僕が目覚めていることに気づいていない。肉体の損傷は少ない、あの空間で聞いた話だが、神が魂を呼ぶことで僕を気絶させたらしい。

 そうすることで、奇襲ができると踏んだのだとか。

《さぁ、やることはわかってるね?》

 ムクの背後には敵二人、分かってるのはどちらかが僕の目をおかしくさせて、ということと、あの剣。

 これをどうにかしなければいけない……ことはない。

 幸い、ムクはオーブを置いて、盗賊二人はそれに夢中。

 人を刺しておいて殺せたか確認しない甘ちゃん連中に、負けるはずがない。

「起きて、起きてよ、シム……」

 僕は敵二人にバレないよう、ムクの耳元でこう言った。

「安心しろ、奇襲だ。盗賊達に特大の重力を掛けろ」

 涙は引っ込んで、僕の目を見たムクにウィンクをする。

「頼むぜ」

『パド・ミュー・ゼネブ』

 圧倒的な力は、策略を弄するまでもなく。

「な……っ……!」

「──────っ!」

 二重の呻きが流れ始める。

 立ってよくよく見てみれば、オーブの右側に僕より一個下くらいの刀を持った女と、左側に三歳は下だろう不健康そうな女が、目に見えない力に四つん這いで四苦八苦していた。どちらも見るに堪えない装いだった。

 四方から責めてやりたいぜ。

《それかっこいいと思ってる?》

「うっせ……」

 安心しろよ、しっかりやる。

「ね、ねえシム。いつから気づいて……」

「正直に言えば全く分からなかったが、トドメを刺さずに放置する奴らだ。奇襲じゃなくても勝てたな」

 僕は真ん中に転がるオーブを拾って、ムクに手渡す。

「何者だ?」

「…………」

 呻き声まで我慢して、何も喋らないつもりだ。

「盗賊だろうが」

 でも、僕を刺してから喋りすぎなんだよ。

《だから簡単に予想できた。ただの盗賊ではなく、ならざるを得なかった子供。オーブを狙ってきたんだってね。そんなんするくらいだ、二人は相当切羽詰ってるよ》

 顔立ちもよく見たら似てるし、もしかして姉妹? 姉妹揃って賊、そしてオーブを狙ってるんだ。

 お察しするよ。

「二対一なら勝てると思って挑んだ。そして情報とは違うもう一人が居たから背後から狙った。が、人を殺したことがないお前らは俺が死んだと思い込んだ」

 わざわざ手を自分の背に置いて、人差し指と中指を上に向ける。

 ハンドサインは伝わり、重力は少し緩和される。

「随分いい能力持ってるじゃないか、賊なんぞにならんでも十分稼げただろうに」

 俯きから僕を見上げ、睨む二人。恨みたいのは僕の方なんだが?

「質問に答えろ。お前が姉か?」

 刀を持った女を指す。

「…………はい」

 折れた。いや、折れ始めた。

「そうか。ならこんな条件をお前に出そう」

 口調まで直して、思いのほか早く終わりそうだ。

「お前がオーブの奪取を諦めて、僕らに従わないなら妹だけを潰す。妹の方は姉へ必死に懇願しろ」

「シム……」

 さすがの人道を外しすぎている行為に、ムクから突っ込まれてしまいそうだ。僕の作戦には彼女の力が必要なので、「これは命を軽んじて奪おうとする賊に、殺人行為を辞めてもらうための教育だ」と囁く。

 一応納得したようだが、やはりどこか消化できていない。僕も十秒で作った詭弁なのでそうなるのも仕方ない。

 本当の目的は、賊を辞めてもらうこと。

「従うなら、妹の重力だけは戻す」

 仲間になってもらうこと。

「…………っ……外道が」

 妹は懇願することなく、僕を見上げながら見下している。

「ムク、力を────」

「し、従い……ます……」


 そうだよな、妹の方が苦しいんだよ。

 お前は拒否できないもんな。

 姉さんなんだから。


「姉さん……!? こんな奴に従っちゃ……」

 どう考えても僕が下劣な悪党なのだが、こいつらは僕を殺そうとした事実を考慮して欲しい。僕は命を奪ってないのでマシだと思う。

「よく言えました!」

 左側の手の人差し指を上に向け、妹の重力は通常に戻る。

『パド・マン・ジャムク』

 そして、影のようなものが妹の手足を縛る。

 いい連携だ、ムク。

「……っ!? このっ、嘘吐き!」

「言うに牙生えてそんなことかよ。楽になったんだ、普通は諸手を挙げて喜ぶだろ」

 右側の手の人差し指を、思いっきり下に向けた。

 一拍置いて、姉の方の重力が強まる。

「……っあァァァっ! あぁっ!」

「姉さんっ!?」

「次はお前の番だよ、妹さん。こんな条件をお前に出そう」

 この二人に沁み渡る、

 僕の最大限の笑顔を向けながら。



 焼き直しになるので、妹の決断は割愛させてもらった。心がバキボキに折れた二人には、何の魔法も掛けずに放っておく。これが放し飼いというやつだろう。

《さ、色々あったけどこの面々で仲良くしよう!》

 できるか、アホ

《こうしたのは君だろ?》

 考えたのはボクたち二人だよ


 突然の悪役ムーブと仲間にするという意味不明な行動。心を折るなんて外道な奴らだ! と思うのもわかる、だが待って欲しい。

 心なら、僕は最初から折っている。

 心、いや、RPGを基本としたこの異世界にとって、一番大事なを破壊している。

 ムクの役割を、壊して仲間にした。

 そこから着想を得た自称神、メップが《じゃあこれから会う人の役割を破壊していったら、楽に異世界攻略できるんじゃない?》という案を実際にやってみた。

 脅しとあまり変わらんのではってのはシーだ。

 むしろ誰も殺さず仲間にする、マルチエンディングを狙ってる。

 言うなればこの世界の天敵が僕で、役割演技が役割破壊にすり替わっただけ。

 夢のような世界が、世界のような夢にすり替わっただけ。

 僕という純粋じゃない人間が、

 世界を壊すだけ。

《ま、これから真っ当に導けば、罪は無いよ》

 そもそもスレスレな作戦立てるなよ


 今の目標は一週間以内に、この夢を終わらせること。

「オーブについては持って歩きながら説明してくれ」

「えっ、でもダンジョンのオーブを持ち出すのは……」

 役割が少し残ってるな……

「オーブの場所が子供にバレてるんだ、移動するしかないだろ。これからどんな襲撃が来るかも分からない。どこかに置くにしても、移動は大事だ」

「あ……うん。シムが言うなら」

 うん、これで一歩攻略に近づいた。

「行くぞ、これからオーブを移動させる」

 姉妹を呼ぶと、直ぐに集まって綺麗に並ぶ。

「その前に……服、風呂、飯だな。金銭があれだが……」

「あ、あの。お金に関しては、ダンジョン内の適当な宝石を採取すれば数日は持つと思うよ」

 スライムの粘液を集めても足しになるかな、と付け加えられる。

 なんならそっちの方が高く売れそうだな、という言葉を引っ込めて。

「それと、入口までなら行ったことあるから、瞬間移動できるけど……それよりも、刺されたところ……」

「ああ、影で縛っておいてくれ」

 ……強いな。

 分かったのは、重力と影と瞬間移動……あ、そうだ。

「お前ら、名前は?」

「カスミ・オスクノカ、です……」

「ミコ・オスクノカ……」

 姉、妹の順で彼女達は名乗った。

 まずは三人。


 この後のことを考えれば、自業自得、因果応報。

 そう言われても、返す言葉がない。

 恨まれるならまだしも、予想できなかった。


 言うに牙生えて、な事だと重々承知しているんだが、

 僕は誰も傷付かない選択をしたつもりだ、そのため後悔していない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る