第三章・始まりの扉



 フォーレスの門まであと一歩──


 安心しかけてはいるが警戒を怠らない四人を、突如暗器が襲った。

 毒矢に瞬速の魔法をかけたものも、同時に襲いかかる。


 武器全てがネウマに向けられていたことに気付いたアズロとフィンの両者が、全ての武器を一気に叩き落として制止する。

 シェーナはとっさにネウマの前に立ちはだかった。


「何者だ」


 普段のフィンからは想像もつかない冷たい声が、場に響く。


「名乗る名は無い。巫女を差し出せ」


 対する襲撃者──黒装束に身を包んだ一団の一人が、刃を向けて威嚇した。


「この者はもう巫女ではない筈だ、何故狙う?」


「巫女を差し出せ、さもなくば──」


「──どうするの? 動けないでしょ?」


 襲撃者全員を瞬時にロープでぐるぐる巻きにしたアズロがやんわりと問えば、一人、また一人と項垂れて──


「あ、舌を噛まれたか。生きてる人は……いないね」


「フィンさん、アズロ、ありがとう。けっこう手練れだったと思うわ。ネウマちゃんを守れただけ、良しとしましょ」


 失策だったと項垂れるアズロの肩を、シェーナがポン、と叩く。

 アズロは一度首肯して、シェーナに微笑んだ。


「これは、アーリアの暗部の衣装ですわ……アクアではない……」


 ようやっと口を開いたネウマに、全員の視線が集中する。

 襲撃後だというのに、ネウマの表情は冷静そのものだった。


「“エスタシオンさん”の知識によれば、これはアーリア南方の衣装で、この辺りでは見ないそうです。もし万一、アーリアがわたしの巫女としての能力を求めたのだとしたら、それは国の未来を垣間見ることがある“託宣能力”かもしれませんわ」



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