第三章・始まりの扉


「あのー、このタイミングで入ればお邪魔虫にならないかな?」


 遠巻きに見守っていたアズロとシェーナは頷き合い、フィンとネウマ(とエスタシオン)に近づく。


「感動のシーンのとこ悪いけど、早いことフォーレスに入ってしまったほうがいいわ。この街道じゃ何があるかわからない」


「すまない、そうだな」


 フィンも首肯すると、すぐそばに立っていたネウマの手を取った。

 その仕草はとても自然で──けれど、今までは見られなかったもので。

 ネウマは少しだけ驚いてから、そっと微笑んだ。


「そうですわね、まずはフォーレスで落ち着かないと」


 四人──あるいは五人は、足早にフォーレスの町を目指す。


“やけに静かですね、この街道はいつもそうでしたっけ?”


 ネウマは頭の中に響いた声をシェーナに耳打ちすると、シェーナは「用心しなきゃね」と頷いた。


「ところでネウマちゃん、エスタシオンさんの意識? は、いつも鮮明なの?」


「“思い出して”からは、いつもそうですわ。まるで一つの身体を二人で分けて暮らしているような感覚です。不思議な感覚ですわ」


「なるほど、それは大変ね──と言うより、大変な人とシェアすることになっちゃったわね」


「ええ、頑張りますわ」


 ネウマは「もう少しですわね」と微笑みながら、眼前に迫る、一見穏やかそうなフォーレスの町を見据えていた。


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