第三章・始まりの扉


「あれ? アーリアとヴァルドは和解しているわよね? 交易も続いているし……まさか、アーリアが何か企んでいるのかしら?」


 表情を曇らせたシェーナの手を、アズロがそっと握る。青に戻った瞳が、優しくシェーナに微笑んだ。


「いや、シェーナさん、それは違うと思うよ。今のアーリアに戦力という戦力はまだないはず。単純に国の将来が不安なんじゃないかな?」


「それでも、アクアとの関係を崩してまで巫女を狙う?」


「だから“既に解任された”巫女を狙ったのさ。現職を狙おうものなら戦争ものだしね」


「なるほどね、確かにネウマちゃんの存在は噂にはなっていたわ。“巫女の能力を持った解任された巫女”がいるって、前代未聞だって」


「わたしなんか狙っても、何も良いことはありませんのに……」


 ほんの少し項垂れたネウマを、シェーナの両手がふわりと抱き締める。


「大丈夫よ、ネウマちゃん」


「シェーナさん?」


「心配いらないわ、アズロにフィンさん、二人はとても強い。貴女を無事セレスまで送り届けてくれるわ。本当なら私も行きたいところだけど──」


「──大丈夫ですよ、自衛なら得意です」


 いきなりの低音とネウマの仕草には似合わないウインクに、シェーナは苦笑した。


「エスタシオンさんもいたわね、よろしくお願いしますよ?」


「ええ、必ず守り抜きましょう。ご安心を」


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