第三章・始まりの扉



 確かに、蘇ってくる何か。

 遠い遠い、記憶。

 それを、なかなか受け入れられずにいた。


 わたしはネウマ。

 そっとエイシアお姉さまをお慕いしていた、巫女のはず──。


 それなのに、目の前のフィンという男性を見るだけで、こんなにも心が揺らぐ。


 どうして揺らぐのか、わたしはもう「知っていた」。


 わたしは──わたしは、アウィス。


「こう──描いたら、フォーレスを通らずにセレネに行ける筈ですわ」


 ネウマは落ちていた木の棒で地面に「狭間の世界の人間しか分からないはずの魔法円」をさらさらと描き、全員を手招きした。


 それは──アウィス──エスタシオンが得意としていた、転移魔法円で。


「ネウマ」


 フィンは、ネウマの両肩を掴んで強く揺さぶった。


「どこで! どこでそれを知った!?」


「いたっ、痛いですわ──落ち着いてください、フィンさん」


「あ、す、すまない……」


 今までとは違って動揺を隠さないフィンの行動に驚きながら、ネウマは一つ一つ、ゆっくりと説明を始める。


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