第14話 喧嘩の顛末
「
クマノヴィッチが残忍な顔で笑いを浮かべながら言った。すかさず、セルゲイが留学生を羽交い絞めにして押さえつける。クマノヴィッチは執拗に留学生の腹と顔にパンチを入れた。何度もパンチを入れられ、留学生の顔が切れて流血している。さすがにボクもこのまま放っておくわけにはいかない。かといって、ボクの力でこいつと喧嘩をしても、ボクもボコボコにされるだけだ。
留学生は、殴られるたびに鈍いうめき声をあげた。そして、口の中も切れたのか、口元から赤い色の泡を吹いている。このまま放置すれば、留学生は死んでしまうかもしれない。なんとかして、クマノヴィッチの暴行を止めなければいけない。
一計を案じたボクは、大声をだした。
「先生!喧嘩です!喧嘩です!すぐにきてください!!」
ボクは大声で叫んだ。その瞬間、ボクの目に星がとんだ。
「余計な事をしやがって!」
クマノヴィッチとセルゲイは、ボクを何回か殴りつけると、大慌てで逃げて行った。とりあえず、この場は収まったが、留学生は気を失って倒れている。ボクは留学生をおぶって保健室に届けた。
保健室の先生は何があったのか、不審そうな顔をしていたが、ボクはとりあえず倒れていたのを見つけただけです、と嘘をついてその場をごまかした。暴力事件が学校側に知れることで適正な対処がされるなら本当のことを言うが、よくわからない中途半端な対応をされると、クマノヴィッチの復讐がより強烈になるだけだからだ。
留学生の処置を保健の先生のお願いした後、ボクはなんとなく、家に帰る気にもならなかった。ボクは所在なく、イクルーツクの街をフラフラと
なんでこんな事ばかり起こるんだろう。なんでこんな目に遭わなければならないんだろう… この理不尽な状況に合理的な答えなんかあるはずもないのだが、ボクは何かの答えを探し求めるかのように、街をフラフラと歩き続けた。
ただ、結局こういう時は「あの場所」へ足が向いてしまうのだ。自分の好きなものを眺めていれば、少なくともその時間だけは嫌な事を忘れられる。そう思ってボクは「あの場所」へ向かって歩き出した。
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