第13話 不気味な教室

 翌日、おれは初めて学校に行った。言葉もよくわからないが、とりあえず即席で覚えた自己紹介をして席についた。なにしろ、言葉もよくわからないので授業もまったくわからない。さらに奇妙なのは、なぜか休み時間にクラス内で笑い声が起きることだった。


 そして、なにか楽しくて笑っている感じがしない。なにか、人をあざけるような悪意のある笑いが度々おこるのだ。なにか不穏な空気を察したおれは、周囲を注意ぶかく観察することにした。


 どうも、後ろの方に座っているでかいヒグマのあたりで何かが起こることが多い。気弱そうで小さなシロクマが転んだりすると笑いが起きているようだ。なんだかわからないが、おれは非常に不愉快だった。


 「これは、いじめじゃねえのかな??」


 おれは、そう推測してさらに観察をつづけた。さすがに言葉もよくわからないので、なんとも事情が把握できない。下手に勘違いして行動を起こすわけにもいかないので、おれは慎重に慎重に状況を把握することに務めた。


 どうやら、シロクマはパシリに行かされたりしているようだ。でかいヒグマは何かノートをちらつかせてシロクマを恫喝している。あのノートを取り上げて、シロクマを脅しているのだろうかとおれは推測した。おれは、自分の腹の中に静かに怒りがたまっていくのを感じていた。


 どうせ授業は聞いてもわからないので、おれは午後の授業中も様子を観察することにした。授業中、シロクマは真剣な表情で授業に集中している。一方、ヒグマはシロクマに消しゴムを投げつけて拾わせたり、紙くずを投げつけたりしている。


 腹の中の怒りはさらに温度を増し、徐々におれは我慢がならなくなってきた。


 放課後、おれはすぐに寮に帰らずに奴らの様子を観察していた。相変わらずシロクマがでかいヒグマのところへ行き、何やら話していた。そして、シロクマは意を決したような顔をすると、何事かを大きな声で叫んだ。


 一瞬、クラス内がシンと静まる。


 その直後、でかいヒグマはノートをこまかく引き裂くと、紙吹雪のようにシロクマの頭からそれを振りかけた。シロクマは泣きそうな顔でノートの切れ端を拾い集めている。「これは、完全なるいじめだ。」おれはそう確信した。そして、そんな残酷な現場を見ているのに、周囲の人間どうぶつは笑い声をあげている。


 瞬間、おれの血が沸騰した。


 おれは弾かれたように立ち上がると、全力ででかいヒグマにむけて走り出した。自慢じゃないが、県内のクマでおれの体当たりを食らって立っていられた奴はいない。暴力は嫌いだが、世の中には許せることと、許せないことがあるのだ。


 おれは、野生の咆哮をあげながら、渾身の力を込めてヒグマに向かって突っ込んでいった。


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