第11話
そして今、俺は動物実験の部屋へ来ていた。
ネズミたちがそれぞれ十匹ずつ、五つの飼育ケージに入れられている。
一、三、五番目のケージは
二番目のグループは半分に同じく生理食塩水を、残り半分にはPOG9活性化プラスPOG4抑制因子を接種。四番目のグループは、十匹全てに因子を注射してある。
こうした処置は第一段階として、既に一時間前に済ませてあった。
「ちゃんと機能しているな……」
ケージをチェックしながら、独り言を呟く。
飼育ケージには、霊力測定器が備えつけてあった。オカルト関連の数値化なんて胡散臭いが、この手の研究には不可欠なので仕方がない。うちのラボが購入した機械は安物で感度も悪いけれど、敏感すぎて隣のケージの霊力を誤検出するよりマシだろう。
霊力を遮断する物質で覆ってあるケージだが、その理屈がよくわからないので、俺はあまり信用していなかった。本来一つで十分な
「まず、現時点では……」
単位は俺も知らないが、数字は34、33、36、32、35。平均すると、34だった。
これが実験開始前のバックグラウンドとなる。
次にケージ内のネズミたちを実験台の上へ運び出し、致死性薬物を接種。霊能遺伝子とは無関係な薬で、ネズミたちを殺すのだ。
わざわざ今日殺さずとも、POG9を活性化しPOG4を抑制すれば当然、いずれは脳細胞がやられて死に至るだろう。しかしそれでは幽霊となっても、霊能遺伝子の直接的な影響か、あるいは単に死んだせいか判別できない。だから霊能遺伝子を操作していないマウスも同様の条件で殺して比較する、というのが表向きの理由だった。
あとは結果を待つだけ。
ケージに戻して見守ると、全てのネズミが死に絶えるまで三十分もかからなかった。
霊力測定器の数値は……。
「……成功だ!」
自分でも驚くほど、明るい叫び声だった。
36、1205、34、2409、35。
コントロールはバックグラウンド程度であり、その平均値を引けば、半分の霊能遺伝子を操作したグループでは1171、全部処理のグループでは2375。ちょうど約二倍だ。
このデータが示すのは、霊能遺伝子を操作されずに死んでも霊体は検出されないけれど、操作された場合は操作の個体数に応じて霊体が検出される、ということ。
つまりPOG9の活性化とPOG4の抑制により、幽霊となったのだ!
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