第5話
こうして俺の新たな研究テーマが決まり、まずはこれまでの研究論文を読んで勉強すると……。
先述の通り
例えばウイルスに感染すると生体側ではウイルス排除のために免疫活動が活発になるが、だからといって活性化された遺伝子の全てが免疫に関与するとは限らない。副作用的に活性化されただけの場合もあるからだ。
同様に「霊能力が高い人々の間で特異的に活性化」の条件を満たすが故に霊能遺伝子群に含まれているものの、霊力上昇とは関係なさそうな遺伝子も存在する。
逆に、霊力上昇への関与を強く示唆するデータが数多く出てきたのがPOG9であり、だからPOG9に関する研究が進んでいる。
それがこの研究分野の現状だった。
「なるほど……」
もちろんアポトーシスとの関連でも、POG9を用いた論文報告が出ていた。
ヒト由来の培養細胞――ビンやシャーレで飼育できる細胞――にPOG9を過剰に導入すると、アポトーシスを引き起こす。特に神経系の細胞で顕著らしい。
「ならば、マウスの遺伝子で同じ現象が起きるかどうか。その確認からだな」
声に出して考えを整理しながら、俺は研究計画を立てていく。
マウスの霊能遺伝子ホモログが本当にヒト霊能遺伝子に相当するならば、マウス神経系培養細胞に導入することで、やはりアポトーシスが誘導されるはず。
だが、もしもマウスとヒトの間で「霊能」の概念が大きく異なるならば、たとえ霊能遺伝子のホモログでも別の挙動を示す可能性がある。その場合ヒトもマウスも同様という前提が崩れて、マウスをモデル系とした霊能遺伝子の研究自体が成り立たなくなってしまう。
だから同じ現象の確認に過ぎなくても、これは単なる後追い実験ではなく、大事な第一歩だった。
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