第4話 調査記録、 警察官Aの話
あぁ、久辺ね、彼のことですか。20年以上の友人ですが、まぁ正直言って変な奴ですよ。
Aが頼んだアイスティーには氷が入っており、陽の光に照らされた紅茶は赤く、ルビーの様に輝いて見えた。
流石に休憩中とは言え、青く、襟の正しく整った制服で大衆のカフェに来ていいものなのか、弁護士の私は少し不安に思った。
私は警察官になる前、かなりやんちゃだったんですよ。そう、やんちゃ。
まぁ、分かるでしょ、若気の至りってやつ?
武勇伝?いやいや、反省してますよ。そりゃ、自分の子供がやったら叱りますよ。
久辺…ねぇ、
そういえば昔、夜の公園であいつと
「俺が不祥事で捕まるか、お前を俺が逮捕するかどっちが先か」
なんて言い合ってましたよ。
いや、冗談半分ですけどね。ハハッ
冗談半分、本気半分ってところ?
Aは満面の笑を浮かべながら、大きく手足を広げ、深く椅子に腰掛けていた。まるで、映画に出てくる組織のボスの様だ。
「そうですか、仲の深い友人だったのですね。」
私が、味のない相槌を打ちながらお茶菓子のチョコレートに手をかけると、彼は真面目で、どこか寂しそうな面持ちで話を続けた。
でもね。彼は犯罪を犯したとはいえ、僕の大切な友人なんですよ。
私が警察官になる勇気をくれた人でもありますし。正直、感謝している所も沢山あります。
そう言えば、あいつは正義と悪について独特な価値観を持っていているんですよ。
一見、こいつ頭おかしいんじゃないかって思うんですけど、よく聞いたら正しくて。 ハハッ
物事の真理を捉えてるって言うの?
なんか彼が言うには、ニーチェは浅い。果物の種がどうとか?言ってました。
よくわかんないですが、弁護士さんなら解るんじゃないですか?僕はそんな頭良くないんでねハハッ。
あっ!あいつの昔話しましょうか?
あいつはねぇ………
それから時間は過ぎ、彼の昔話しを終えた頃、既に彼のアイスティーの氷は溶けてしまっていた。だが、おかげで赤を構成している様々な色が浮かび上がった様に見える。
「最後にお聞きしたいのですが、彼に変わったことはありませんでしたか?」
変わったこと?
あいつは常に変わってたからなぁ…
あっ!そういえば事件が起きるかなり前なんですけど、
珍しく取り乱した様子で
「首が!クビの骨がないんだ!いや、無いはずがないんだけど、まるでないんだょだからぐるぐる回って、ちぎれそうなんなだ」
って意味不明な電話をかけてきました。
ついに薬物に手を出したのかと思いましたよハハッ
でもあいつはシャブには手を出さんでしょ。
まぁ、実際のところ大学の研究で心を病んだんでしょう。
そんな気がしますね。
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追記、結果として心身喪失と思われるが、警察官Aが電話を受けた時点では正常と思われる。
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