門扉前の戦い 4
上の制止を聞かず、主戦派が下りてくる。人間をあなどって。羽を広げた、複数の影。次々に、浮島へ。
おもいっきり、瑞樹は顔をしかめる。想像した、集中攻撃を受ける自分を。指揮官についでの役立たず。仲間の期待も裏切る。自分を認めてくれた人に、負担を負わせるのも。避けるために、知恵を絞る。
魔人の足が地面に着く前。瑞樹は後ろに回り込む。片方の羽を切り、外に蹴り出す。ただ、連中の仲間意識が薄ければ、水泡に帰するが。
助けに向かう、魔人。彼らにも、仲間意識があった。一体、一体、切るよりも、数を減らした。
考えを変えて、魔人は宙に留まる。光の雨を降らせてきた。イリスは盾を展開。魔人の力を吸収する。呼び方が違っても、同じ不思議な力。魔を抜き、自分の物にする。
脇で、瑞樹は大きく足を踏み出す。光の刀で、光の雨を打ち返す。映画を思い出し、いけるのでは。考えたが。うまくいった。当たった、魔人が落ちていく。追い掛ける、仲間。数が減ったはずなのに、奥の闇から供給される。
視界の左端。光の塊での連射が始まる。色が、白銀。召喚した、キョウが参戦。イリスの胸が熱くなる。
凍らせるほどの冷たい風。イリスを冷ます。吹いてきた、右側。光の塊での連射。色は……。
バクンと、心臓が鳴る。頭が真っ白になった。ドクドクと音が立ち続ける。藤紫色。フェウィンの持ち色だ。やっと、本人に会う。
「惚けるな!」
誰かの叫び。目の前に、敵。振り上げられた、白い光の剣。瞬間、イリスは一撃を放とうとした。影が交差する。腹に手が回されて、後ろに下がらせられる。視界に、緑色の光の剣が入った。脇で動く、緑色の長い髪。別の意味で、バクバクし始める。危うく、瑞樹を仕留めるところだった。
<あんたはっ!>
「島を登ってくるのは、推測の範囲内だよ」
ぐるぐる回っていた怒りを、瑞樹が吐き出す。イリスは明かす。島肌は、切り立った崖と同じ。手足を掛ける箇所があるので、登れる。最後に高々と跳ね上がり、剣を振り下ろすところだった。
<……!>
「上下の動きより、まっすぐ突く方が早い。充分に間に合った」
瑞樹は言葉に詰まる。イリスは丁寧に説明してやった。
<! だけど……>
「私が悪かった。あんたに言いそびれた。私の前に立つな、と。攻撃を仕掛けるまでの速さが売りだからね」
瑞樹が言い募ろうとした。イリスは説明を続ける。体格差で負ける、自分は速さと技術で補う。撃ち損ねて、復讐の機会を与えるのは愚。敵が見えた方が良い。
「護衛の真似事か? 私に護衛はいらない。私だけが生き残ってしまうからね」
<……>
静かに、イリスは問いかける。瑞樹は黙った。護衛が全滅する事態が繰り返されれば、周りが自分を疑い出す。知りもしない。知ろうともしない。輩に、ズカズカと踏み込まれたくないから。最初から、付けない。
恨みがましい、まなざしを向ける。瑞樹自身が判っていた。子どもじみている、と。守りたいと願う人がいると、判って欲しかったが。他の方法が思いつかなかった。
「改めて……」
<断る>
「……。判った。あなたが飛び込んでくると考えに入れて、事に当たる」
彼に負けて、イリスは譲歩した。目の前に立たれるのは、嫌なんだけどな。キースたちとは、勝手が違う。団の名誉を持ち出したのを思い出す。誤ってでも、仲間を傷つけたら、世間の評判が落ちる、と。
会話の最中。異世界シルフィアの裏側。砲を実体化。世界の天辺に据える。砲身が長い。自分たちの所まで届くと、敵に思わせられる。
イリスの攻撃が止まったことに合わせる。フェウィンとキョウの攻撃も止まる。敵の出方を待つ様子だ。
「さて、敵に選択肢を示そうか。セツナ」
イリスが合図を送る。敵の背後を突いた、セツナに。戦いを続けるか、降伏するか。
依然として、数にしても、不思議な力の量にしても、自分たちが有利。敵は戦い続けることを選んだ。
「ネネ。表に出して良いよ」
イリスが指示する。肩に登った、ネネが自分の力を吸収した。敵から見れば、突如として現れる。小さいが、無視できぬ深紫色の光。挟む位置の砲の砲口も、白く光り出す。
「では、力ずくで、お帰りいただこう」
辺り一帯を、煌々と照らす。緑色が筋として入った、深紫色の光が。浮島の真下まで。改めて、広げられた、ネネの力が下りる。強い光の下で増した、闇が。通った後は、敵の姿は一体も無かった。
浮島の真下まで、確認。イリスとネネは、力を吸収。セツナを呼び戻した。
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