第4話 徳次郎の葬儀
徳次郎の葬儀は町の公民館で行われた。
薫と同じように倒れて、そして急ぐように旅立った。
百合子は身内だけの葬儀を行うつもりだった。そこへ町役場の人が来て、「面倒でしょうが、多くの方が徳次郎さんに別れを告げたいとのことで」と言われ急遽公民館で行うことになった。公民館には多くの参列者がいた。公民館の壁に徳次郎が撮った町の写真が何枚も架けられている。
「高校卒業後父は写真家になろうと上京しました。けれどその夢は叶わず二十八の時に故郷に戻ってきて西村写真館を始めたと聞いています。写真館を始めてすぐに母と結婚して二人三脚で働いて私達姉弟を育て上げてくれました。私達は高校卒業後にこの町を出ました。その後は一緒に暮らすこともなく昨年は母、そして父」
弔辞を読む百合子は声をつまらせた。
「もう時代遅れとなった写真館ですが、これまで二人が続けてこられたのも、当初からご愛顧頂きました皆様のおかげです。本当にありがとうございます」
百合子と秀俊は深々と頭を下げた。
「母が亡くなったあと父は横浜で暮らしておりました。横浜にいる時は元気がなく心配しておりました。そんな父がもう大丈夫だからと言って、この写真館へ帰って行ってしまいました。それからは皆様もご存知のように、写真館のお客様には、父の愛用のカメラで撮ったモノクロ写真をサービスとしてご提供させて頂くとともに、町の風景や、孫の明美も参加させて頂いた町おこしのイベントの写真を写真館に飾っておりました。父の写真が今時の写真にはない優しさや力強さがあると皆様がご紹介下さり、そのおかげでテレビにまで取り上げて頂きました。父は夢が叶ったとそれは喜んでおりました。父にとって最期のいい思い出になったことと思います。今まで父を、そして父の写真を愛して下さった皆様に心から感謝しております」
そう言って締めくくった。
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