私の新しい日常――

今日はDモールに来ていた。

こんな人が多いところは怖いけれど、灯火さんのプレゼントを買うためだ。頑張らなきゃ。

平日にもかかわらず、たくさんの人が買い物をしているらしい。足元をずっと見ているせいで、さっきから、何度もぶつかりそうになっている。


私は壁際の案内板のところまで歩いていく。本当はネットで買いたかったけれど、明日が誕生日ということだから、そうも言っていられない。もっと早く言ってくれればよかったのに、と思いながらも、でもこれもいい機会だからと思い直す。

確かに灯火さんのおかげで私の生活は変わったけれど、私自身は何も変わっていない。

だから、これが私を変える、その一歩。今までの買い物は星住さんが行っていたけど、今は一人暮らしだ。食べ物さえ通販頼みの今の状態から、どうにか脱却しなければ。

そうしていつか、灯火さんみたいになれたらなと思う。 




目的のお店に着いて、灯火さんに似合いそうなピアスを探す。

灯火さんと話すようになっても、私の学校や施設での生活は大して変わってはいなかった。施設では昔からあんな感じだったし、学校でのいじめも続いていた。というかそれに関してはだんだんとエスカレートしていた。

だから、ある日、学校でのいじめが急になくなったのには驚いたし、見たこともない親戚がやってきて私を引き取ると言い出した時には、天地がひっくり返ったような思いがした。

灯火さんは本当にすごい。たばこを吸っていたり、盗聴器を付けたり、犯罪まがい――というか犯罪行為をしていたりはするけれど、どうしようもないと思っていた私の生活を一変させてくれた。

普通じゃない。

灯火さんは全然普通じゃない。

私にとって、普通じゃないということは『悪いこと』そのもので。

だから、私はいじめられているんだと思っていたけど、

そうじゃなかったのかもしれない。

何もしなかったから。

灯火さんみたいに、行動をしなかったから。

そのことが普通だとか異常だとか、そんなことは関係がないのかもしれない。

最近はそんなふうに思い始めている。

私はそうして、今、楽しく過ごせている。少し前までの私では考えられないほどに。全部灯火さんのおかげだ。

でも、灯火さん、あなたはどうなんですか?

時折見せる、その濁った瞳は何を見ているんですか?


私に、それを払うことはできませんか?




目的のものを買えたのでとっとと帰ることにする。

やっぱり人の多いところは怖い。視界にはたくさんの足が映り込み、たくさんの声と、たくさんの匂いが漂っている。

ビクビクしながら壁伝いに歩いていると、


何かが爆ぜる音がした。


そうして悲鳴がいたるところで聞こえてきた。


煙の臭いがする。視界に映る足がすごい勢いで動いていく。

『副作用』なんか、気にしてる場合じゃない。そう思って、顔を上げると、視界には赤い炎が立ち上っているのが見えた。


「SPSだ!」


誰かが叫ぶ。視界の奥で、何かが爆発しているのが見えた。

なんで?

疑問に意味なんてない。

逃げなくちゃ。

私の視線は誰かに固定されて、その人が私を通り過ぎる。それに導かれるように、私の首も一緒に動いて、体の向きを変える。その人についていくように、急ぎ足で、逃げた。後ろから迫る炎から逃れるように。


悲鳴は絶え間なく聞こえてくる。視界の端で、誰かが殴られているのが見えた。


「お前も仲間なんだろ!?」


その声がなぜかはっきりと耳に入って――そして、殴られている彼の腕には、私と同じようにDS《ダス》がついていた。

まずい、そう思って、腕を隠したところで――

私の意識は失われた。

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