第8話 術後
術後、鼻の中にこれでもかとガーゼを詰められた俺は待機室のベッドで休んでいた。
看護師から今後の説明を受ける。
明日から3日間通院してガーゼを取り換える必要があること。
3日後には詰め物がガーゼからスポンジに変更。
だいぶ呼吸が楽になるはずだと言うことなど。
それにしても話を聞いている間にも涙が止まらない。
なんで? まだ麻酔が効いてるし痛みはないけど。
「それは鼻の中にガーゼが詰まっているからですね。顔の上部の水分が行き場を失くして目から出てくるんですよ。血が混じった涙も出たりしますけど大丈夫ですから」
もうあまり驚かなくなったけど、血涙はちょっと怖いな……
うん、何だか色々あり過ぎて感情もぐちゃぐちゃになって疲れてしまった。とりあえず帰ろう。
看護師たちにお礼を言って受付へ。
時刻は既に13:30を回っている。
午前の部はとっくに終わっていて、俺が最後の患者のようだった。
「あー、ゴメンなさい月本さん。前回、鼻中隔矯正術+粘膜下下甲介骨切除術で67,000円ってお伝えしてましたけど、副鼻腔炎手術が追加になったので、142,000円になります」
あー、じゃねえっての。
まぁ、もう驚かないけどね。意識も朦朧としてるし。
「はい。でも限度額適用認定証を出しているから、自己負担限度額の80,100円以上は払わなくていいんでしたよね?」
「そうです。増えちゃいましたけど本日お持ちですか?」
「大丈夫です。多めに持ってきましたんで」
限度額適用認定証と高額療養費制度と言う存在も手術を受けることになって初めて知った。
限度額適用認定証は限度額以上の支払いは不要になる制度のことで、高額療養費制度は限度額以上支払った分が戻ってくる制度のこと。
公的医療保険に加入していれば受けれるはずなので、もし手術を受けることになった場合は、先に自分の限度額を調べておくことをお勧めする。
他にも傷病手当金という、業務外で起こったケガや病気に対して支払われるものもあり、これも今回の手術で適応されるはず。
日本は医療制度が手厚いと聞いてはいたけれど、それを肌で感じる機会は意外と身近にあったのだ。
*
状況次第ではタクシーも想定していたが、結局家には徒歩とバスで帰った。
最寄りのバス停に着くと薬局に寄って処方してもらった薬を購入。
スーパーで弁当と飲み物、果物などを買い込んでから帰宅。
ただ、家に着くと徐々に痛みが増してきた。
これはヤバい、予想していたより痛い。
この日は食事がまだだったので、買ってきた弁当を食べてすぐに鎮痛剤を飲む。
……
ダメだ。変わらん。
鼻の中に詰め込まれたガーゼのせいで鼻呼吸はゼロ。
さらに、鼻をぎゅぅっとつままれて、そのまま横にひねられたような痛みがずっと続く。
それに頭もボーッとしてきた。
そう言えば熱も出るって言ってたよな。
計ってみると38.3℃。
結構高いな。それに涙も止まらんし。
この涙が厄介で、目からとめどなく溢れてくるから何とも悲しい気持ちになってくるのだ。
なので常にティッシュを当てていたが、それを見てちょっとした衝撃を受ける。
血……?
慌てて鏡を見てみると、涙が赤い?
これ、もうホラーすぎるだろ。
手術当日はソファでずっと横になって痛みに耐えながら過ごしたのだった。
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