オレはイヌ
目を覚ました。オレは軒先で寝ていたようだ。自身を確認すると白い毛に覆われている動物らしい。
「シロ。おいで」と呼ぶ声がする。
「ワン!」と、オレが吠えた。どうやら犬らしい・・・。
オレを呼んだのは、お爺さんのようだ。背中にかご、手にはクワを持っているところを見ると畑に行くようだ。オレはお爺さんに付いていった。お爺さんの畑は日当たりの良い斜面の小さな畑だった。
お爺さんは手際よく野菜を収穫し、クワで土を寄せたりする作業をしていた。オレは畑の横のあぜ道を行ったり来たりして遊んでいた。その時、畑を見ると角に黒いネコがいるのが見えた。オレに見えてお爺さんには見えないらしい。黒ネコに近づくと、ネコは畑を叩いたり掘ったりしていた。まるでオレに『ココを掘れ!』と言っているようであった。オレが掘ってみると、金色の丸いのが出てきた。オレは金色の丸いものを咥え、お爺さんに見せに走った。
お爺さんは、それを見て、畑に尻もちをついた。
「ど、ど、ど、ど、何処で、これを?」お爺さんは慌てていた。
オレは、お爺さんを引っ張り、掘った場所に連れて行った。お爺さんはクワで掘り返す。金色の丸いもの、少し小さい丸いもの、銀色の四角いのが出てきた。
オレはこの後の展開を予測した。たぶん、悪いお爺さんが現れてオレはイジメられるんだろうなと思うのだが、お爺さんの家は山の中にポツンとある家なので隣家は無い。
アレ?それだと偉いお侍さんが馬で通ったときに灰を撒いて花が咲くと言うのも無くなるな・・・?
お爺さんは家に持ち帰った物を見ながら、お婆さんと何やら相談していた。翌日、お爺さんは町に家で作っていた笠と昨日、掘り出したものをいくつか持って出掛けて行った。オレも付いて行こうとしたら、お婆さんとお留守番だと言われた。
夕方近くから雪が降りだした。オレは嬉しいが、町に行ったお爺さんが心配だった。オレは雪の中をお爺さんを迎えに山を下りて行った。山の途中のお地蔵さんの所でお爺さんが何やら作業をしていた。
「ワン!」オレは吠えた。
「おう。シロ。迎えに来てくれたのかい。ちょっと待っててくれよ。お地蔵さんが雪で可哀そうだから笠を掛けてあげてるからね」お爺さんはそう言って、お地蔵さんの雪を払い笠を掛けてあげた。
そしてオレはお爺さんと一緒に家に帰ってきた。
家に帰りついたお爺さんは、今日の事をお婆さんに語っていた。町で年末の買い物、そして帰りのお地蔵さんの話をしていた。
「良いことをされましたね」と、お婆さんが言った。
寝る時間となり、オレは土間で丸くなった。
オレは、夜中になろうという時間に外で不審な動きに気づき目が覚めた。戸の外で何やらガサゴソとしているらしい。家の中に入ってきたら、ひと噛みしてやろうと待っていたが、家には入らずに去っていった。
翌日、お爺さんが戸を開けると、そこには、昨日、町に買い物に行った際に重くて持ち帰れないからと少量にした食べ物が山積みにされていた。米俵や肉、魚、野菜の入った箱。そして、手紙があり『笠をありがとう。これで冬を越せます』と書いてあった。お爺さんはお婆さんを呼び、お地蔵さんがある方角を見て、手をすり合わせお礼をしていた。
お地蔵さんが持ってきてくれた食材で年末の料理をしたお爺さんとお婆さん。
『来年も良い年でありますように』と願い、眠りについた。オレも美味しいものを食べて寝た。
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