オレはオオカミ

 目を覚ましたオレは周りを見た。薄暗い所だと思うのだが、どやら穴倉の中らしい。今度は何になったのだろう?とオレの心はときめいた。

 穴倉は狭く、立つのは難しい。オレは四つん這いで歩き出した。特に不自由はない。そして手を見ると毛むくじゃらの細い手で、犬系の動物のようであった。オレは穴倉を出て、月の光に照らされた小川へ行き、小川に映る自分を見た。そこには口の大きなオオカミが居た・・・。オレは驚き、後ずさった。それから、もう一度、小川を覗き込んだ。やっぱりオオカミであった。


 3回目なので、流石にオレにも大体の展開は分かる。オオカミの出るお話しのはず。


 オレは周りを見渡した。森の中ではあるが、木々が疎らになっていて、多少、手入れされた森のようであった。

「グゥーーー」オレの腹が鳴った。オレは空腹であった。


 森を暫く歩くと、開けた場所に小さな家を見つけた。

 窓から家の中を覗くと、窓際に招き猫が置いてあり、美味しそうな小豚が1匹、奥で何やら作業をしているようであった。オレはドアをノックする。小豚はチェーンロックを掛けたまま、ドアを少し開けた。オレは空かさず、小豚に営業スマイルで微笑んだ。その途端、ドアは閉められ、内鍵が掛けられた。


 ドアの前でオレの顔を思い出す。小川に映っていたのはオオカミ。『まぁ、そうなるよね』と思う。しかし!食物連鎖!弱肉強食!オレは小豚が食べたい!


 小豚を説得しようとドアの前で声を掛けるが出てくる様子はない。小豚の家は『ワラの家』だったので、オレは、思いっきり息を吸い込み、小豚の家に息を吹きかけた。

『バヒューーーーー!!』

 小豚のワラの家は吹き飛び、骨組みだけになったので、小豚を捕まえようと追い掛けた。しかし、小豚もさる者で、ちょこまかとして捕まらず・・・。

 小豚は別の家に逃げ込んでいった。


 小豚が逃げ込んだ家は、木で出来た家だった。窓から覗くと2匹の小豚が何やら相談しているようであった。オレはワラの家と同じく息を吹きかけた。

『バヒューーーーー!!』『バヒューーーーー!!』

 流石は木の家は、一息では吹き飛ばなかったが、2回目で半壊した。オレは2匹の小豚を追い掛けた。そして3軒目の家に逃げ込んでいった。


 3軒目の家はレンガの家。

 ここまで来れば、お話しのオチはオレでも分かる。『煙突で火傷して逃げる』『煙突から鍋へダイブする』のどちらかだろうと思った。


「さて、突撃しますか」オレがドアの前に立つと、ドアが内側から開いた。ドアの前に居たのはオレと同じオオカミ。

「これからパーティーをするんだ。君も良かったら参加するかい?」

「へぇ?いいんですか?」オレは思いがけない提案に驚いた。

「うん大丈夫。パーティーは多い方が楽しいし、まぁ、料理はデリバリーなんだけどね。沢山あるから食べてって」


 オレは何のパーティーなのか分からずに参加し、お腹いっぱいになり暖炉の前で寝てしまった。オレの横では黒猫が丸まって寝ていた。

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