オレはお婆さん
目を覚ましたオレは見たのは、ログハウス風の天井であった。ベッドに寝ている感覚がして起きようとしたが体がいう事を聞かない。手を見ると皺がより、細い指が見えた。体を触るとやせ細っていた。漸く、ベッドから起き上がるが、腰が曲がったまま伸びない。足も細い。
「はて?」
今度は何になったんだろうとオレは首を傾げた。テーブルに置いてあった鏡を覗き込んで見た。そこに居たのは歳を取ったお婆さんであった。
テーブルには読みかけの手紙が置いてあったので読んでみた。
『お婆ちゃんへ。
お母さんに赤いずきんを作って貰ったので、明日、お婆ちゃんの家に遊びに行く時に被って行きます。待ってってね。
メイジーより』
オレは赤ずきんのお婆ちゃんになったようだ。と、いう事は、オレはオオカミに食べられるのか?それと、赤ずきんちゃんの名前はメイジーなのか?
オレは、ベッド脇の椅子に掛けられていた上着を羽織り家の外に出てみた。家は森の中の開けた所にあり、小鳥がさえずっていた。家は白い壁に赤い屋根の小さな家。そして木の塀で囲ってあった。
オレの予想だが、足腰が弱り、あまり外出しないで家に籠っているのだろうと思う。オレは外に出るのも辛い。そして孫か曾孫か分からないけどメイジーが遊びに来るのを楽しみにしているのではないだろうかと思う。
家の中に戻り、オレは気づいた。テーブルの下にカゴがあり、そこに黒ブチのネコが寝ていた。さっき家の中を歩いたときにはカゴは無かったような気もするが、これもオレの夢なんだろうと思う。じゃないとオレはお婆ちゃんにはならないもんな。
手紙に書いてあった『明日』が今日なのか、明日なのか分からないけど、スマホもテレビもない家で過ごすのは、オレには辛い。なので、取りあえず寝る。オレはベッドに横になり、目を閉じた。
しばらくして、家のドアが開き、誰か入ってきた。
「シャーーーー!!!!」
ネコが威嚇する声で、オレは目覚めた。オレの顔を覗き込んでいたのは、口が耳まで裂けているような気がするほど大きな口をしたオオカミだった。
「ヒェ・・・・!」オレは驚き、息を飲んだ。
オオカミはベッドに横たわるオレを軽々と抱きかかえ、丸呑みにした。オレは焦らず、オオカミの腹の中でジッとしていた。この後の展開は、赤ずきんと問答して、猟師が来て、助け出されるはず。ただ、これがオレの夢なのが気になるが。
オレはオオカミの腹の中でウトウトしていると、外で何か声がする。
『お婆ちゃんの目が大きいのは何のため?』『お前を良く見るためだよ』
『お婆ちゃんのお耳が長いのは何のため?』『お前の声を良く聞くためだよ』
『お婆ちゃんのお口が大きいのはなんおため?』『それはね。お前を食べちゃうためだよ』
オレは赤ずきんが食べられると思い、息をのんだ。
『パァーーン。パァーーン』
しかし、乾いた音がした。赤ずきんが食べられる前に猟師が来たのだろうか?とオレは考えたが、オレの腹も痛む。たぶんだが、オオカミの腹を撃ったんじゃなかろうか。そしてオレの腹にも・・・
オレの意識が遠くなって、目の前が暗くなっていく・・・。赤ずきん、可愛いんだろうな。見たかったなぁ。
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