第5話お昼休み

お昼休みに突入すると僕とカナリアは揃って教室を抜けた。

「今日は学食に行こう。安くて美味しいランチを頂けるよ」

「そうなんだ。昨日は学校に食堂があることを知らなくて…コンビニで買ってきた物を食べたけど…こっちの学食は美味しいの?」

「場所によるだろうけど。ここのは相当美味しいよ」

「ホント!?じゃあ色々と教えて欲しいなっ♡」

カナリアの言葉に頷くと僕らは揃って一階に存在する学食へと向かう。

本日も学食は生徒で一杯で既に行列が出来上がっていた。

「ここで食券を買って注文するシステムなんだよ。今日も放課後に買い食いする予定だから…昼食は少しにしておいたほうが良いかもね」

僕の言葉を受け取ってウンウンと頷くカナリアはどのメニューにしようか迷っていた。

「僕はラーメンにするよ。二百円で財布にも優しいし相当美味しいんだよ。おすすめの一つだね」

「じゃあ私もラーメンにする」

カナリアは僕と同じものを注文すると学食で働いているおばちゃんに食券を渡していた。

「はい。番号札だよ」

おばちゃんは僕らそれぞれに番号札を渡すと薄く微笑む。

「ラッキーだね。こんな美人さんと仲良くなれて」

おばちゃんは僕に向けて少しだけ誂うような言葉を口にするとそのまま調理場に引っ込んでいく。

「じゃあ席を確保しようか」

二人並んで空いている席を探すと僕らは並んで腰掛ける。

そこからラーメンが出来上がるまで他愛のない会話をして過ごしているのだが…。

そこに邪魔者が現れるとは僕も予想していなかった。

「四楼!噂になっているよ?転校生に早速手を付けているって!不純異性交遊なの!?」

その人物は近所に住むお姉さんで僕の一つ上の先輩だ。

「何言っているんですか。僕がそんな勇気のある行動を取れる人間だって思っているんですか?」

僕らのもとに訪れた風紀委員長である長野小豆ながのあずきに嘆息すると呆れたような表情を浮かべて見せる。

「む…。それもそうね。じゃあ転校生と仲良くしているだけなのね?」

「そうですよ。学校案内に学校の近くの街を案内しているだけですよ」

「そう。それなら良いけどね。じゃあ節度を持って学生らしくね」

長野小豆の言葉を真摯に受け止めると僕は噂の出どころが気になった。

「小豆先輩。何処からそんな噂を聞きつけたんですか?」

僕の問に長野小豆は少しだけ顔をしかめて苦々しいような表情を浮かべる。

「まりからよ。あの娘って…四楼を崇拝している節があるでしょ?昔のことを今でも感謝しているようで…そんな四楼の近くに女性が居るのが許せないみたいで…あらぬ噂を流しているのかも。私も出鱈目だって分かっていたんだけど…万が一の場合も考えて一応尋ねておいたのよ。それに尋ねに行かないとまりがうるさいでしょ?」

まりの名前を耳にして僕は彼女のことを少しだけ考える。

だがおばちゃんの番号札を呼ぶ声が耳に飛び込んできて思考するのを一度中断した。

僕はカナリアの分のラーメンも一緒に取りに行くとテーブルの上に運んだ。

「食堂では番号を呼ばれたら自ら取りに行くんだよ」

「そうなんだね。今回は取りに行ってくれたんだ。ありがとうねっ♡」

カナリアからの微笑みを正面から受け止めると僕らは昼食を取ることとなった。

ラーメンを受け取りに行っている間に長野小豆は既に立ち去っていた。

「そう言えば…まりって誰?」

カナリアは食事をしながら話を止めずに僕に問いかける。

「んん〜。面倒な後輩かな」

「後輩?異性の?」

「そう。小さい頃、公園で悪い人に絡まれていたところを助けたんだ。そうしたら異常に懐かれてね」

「流石侍って感じなエピソードだねっ♡」

「そんな良いもんじゃないよ。ただ咄嗟に体が動いただけだから」

「そういうのが本当のヒーローでしょ?」

「そうだったら嬉しいよ」

会話を進めながら僕らは食事を進めていく。

十分もしない内に昼食が終わると僕らは午後の授業へと向かうのであった。

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