第2話放課後デート?
「侍!学校内を案内してください!」
放課後のことだった。
本日は転校初日ということで全ての授業で僕は彼女に教科書を見せてあげていた。
「僕は侍じゃないよ。そう言えばいつまで留学の予定なの?」
苦笑して鞄に教科書をしまうと世間話をするようにして彼女の身の上話を聞こうとしていた。
「えっと…こっちは四月が入学式って知らなかったんですよ。向こうは大体九月が入学式なので。だから一年間は向こうの高校に通っていたんです。それで満を持して二年生の一学期に転校してきたんです。留学というよりもちょっとしたミスで入学の機会を失っていたって感じですね」
なるほどと相槌を打つようにウンウンと頷いているとカナリアは先に席を立ち上がった。
「でもその御蔭で侍と出会えたんですから結果オーライですよね♡」
カナリアは目を輝かせて僕に羨望の視線を向けて微笑む。
もう僕は否定するのも野暮な気がして苦笑すると鞄を持って立ち上がった。
「何処を案内してほしい?」
カナリアの要望に応えるような言葉を口にすると彼女は先程以上に表情を明るくさせる。
「刀!刀がある所に連れて行ってください!」
そんな現実的じゃない言葉を耳にした僕は文化の違いを感じながら少しだけ頭を悩ませていた。
「そうだ!じゃあ道場に行こう」
「道場?」
「うん。本物の刀は置いてないけど…木刀や竹刀ならあるはずだから」
「どうして刀は無いんですか?」
「んん〜。銃社会だった人達に簡単に理解できるか定かじゃないけど…こっちでは危険なものを持ち歩くだけでも逮捕される可能性があるんだよ」
「え?どうして?」
「んん〜。持っていると言うことは何かを犯す可能性があるってこと。疑わしいなら捕まえる。犯罪を未然に防ぐためのルールだと思うよ」
「じゃあ自分の身はどの様にして守るの?特に女性とか」
「まぁ危ないところには行かないってことと。こっちは警察が特に優秀だからね」
「スーパーヒーローみたいに?」
「そうは言わないけど。そもそも殆ど平和な国だから。異常に怯える必要はないって感じかな。犯罪に巻き込まれる人のほうが稀って感じだね」
「なるほど。本当に良い国なんですね。だから侍は消えたんですか?」
「消えたのかな?そこはわからないな」
「でも今まさにここに侍はいますからね♡私にとっての侍は四楼だけです♡」
彼女は僕に美しく優しい笑みを向けるので胸が異常に高鳴りを覚えていた。
「もうすぐ道場に着くよ」
廊下を歩きながら僕らは会話を繰り返して校舎の外にある道場へと足を向けた。
剣道部員が竹刀を振って居るのを指差すとカナリアは目を輝かせて驚いていた。
「これが現代の刀!?」
「どうかな。剣道っていうんだけど。あっちに立てかけてあるのは木刀だね」
そちらに指をさすとカナリアはもっと表情を豊かにして喜びを全身で表していた。
「自分用に欲しかったら…旅行に行くと良いよ。ある場所に向かえば簡単に手に入るから」
「そうなの!?それじゃあ私も侍になれるの!?」
「ふっ。どうだろうね」
苦笑交じりに笑って誤魔化すと僕らの放課後は徐々に過ぎていた。
「侍!街も案内してよ!」
道場を後にした僕らは校門まで向かう。
カナリアは僕に美しく人懐っこい笑みを向けてくる。
「まずは何処に行きたい?」
「美味しいものが食べたい!」
「お昼食べたでしょ?」
「買い食いってやつがしたい!アニメで見た!」
「そっか。わかったよ。とっておきの場所に連れて行くよ」
「やったぁ〜♡」
そうして僕とカナリアの放課後デート?はまだまだ続こうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。