殿下の愛しのハズレ姫 ~婚約解消後も、王子は愛する人を諦めない~
はづも
第1話
「すまない。アメリ。婚約を解消してほしい」
12歳の誕生日を迎えたばかりの私にこう告げたのは、この国の第一王子・テオバルトだ。
さらさらの金の髪に、青い瞳。彼は穏やかで優しい、みんなの憧れの王子様。
そんな彼の婚約者だったはずの人が、伯爵家生まれの私、アメリ・フローレインだ。
色々な本を読んだり異国のお話を聞いたりするのが好きな私は、こんな状況になんとなく覚えがあった。
婚約者に気に入られた女性を疎み、ひどい嫌がらせをして婚約破棄される「悪役令嬢」とやらのお話。最近の流行りらしい。
いくつかパターンがあるけれど、どの物語でも、人前で婚約を破棄しようとする王子はやけに自信満々で、隣には他の女性がいて……といった部分は大体お決まりだ。
けれど、現実の私に起きた「婚約破棄」は様子が違った。
婚約を解消したいと話すテオバルトは俯き、絞り出すように言葉を紡いでいて。
隣にも他の女性なんていはしない。
王城の一室で向き合ってソファに腰かける私たちは、二人きりだ。
「アメリ、ごめん……。本当に、ごめん。今の僕の力では、父上たちを説得できないんだ」
そう話す彼の声は震えている。
テオバルトがあまりにも辛そうにしているから、婚約解消が彼の本意ではないことは十分に伝わってきた。
私たちが婚約したのは10歳のとき。この2年間、それなりに仲良くやってきたはずだ。
私のほうはもちろんのこと、テオバルトが浮気しているなんて話も聞いたことがない。
じゃあ、どうしてこうなったのかというと――。
「お気になさらないでください。殿下。私の能力がハズレだったのがいけないのですから」
「っ……! ハズレだなんて、そんな言い方」
「いいのです。みんなそう言っていますから」
そう。私のほうに問題があったのだ。
テオバルトが泣きそうに顔を歪める。
婚約を解消すると言い出した側にそんな顔をされてしまっては、私は泣くに泣けない。
気にしないでほしい。あなたはあなたで幸せになってほしい。そんな想いを込めて、精一杯の笑顔を作った。
「私、アメリ・フローレインは、テオバルト殿下との婚約解消を受け入れます。殿下、今までありがとうございました」
「っ……」
テオバルトはついに耐えきれなくなったのか、額を押さえて泣き出してしまう。
静かな部屋にぐす、ぐす、と彼が涙する音が響く。
そんなテオバルトの姿を見て、私は「ずるい」と思った。
婚約の解消が決まった今、私はもう彼の肩に触れて慰めることはできない。
そんな風に泣かれたって、本当は支えたいと思っていたって、私にできることはもうなにもないのだ。
だから、そんな態度を取られると困ってしまう。
もし、「悪役令嬢」のお話のように高圧的に婚約破棄を叫んでくれたら、私だってこんな気持ちにならずに済んだのに、なんてこともちょっぴり思ってしまった。
「……では、殿下。失礼いたします」
これ以上ここにいても、なにもできはしない。
そう思い、軽く礼をして部屋を出ようとした私に、「まって」と声がかかる。
「……アメリ。僕が自分の力で婚約者を選べるようになったら……。きみを迎えに行く。だから、待っていて」
涙交じりの言葉に、私はなにも返さず彼の元を立ち去った。
テオバルトは第一王子。彼の一存で婚約者を決めることはできない。
いつか迎えに来てくれるなんて、そんな期待をしてはいけない。
だって私には、王子の婚約者になれるだけの力がないのだから。
婚約解消の原因は、テオバルトではなく私・アメリにあった。
この魔法国家ソルマギアでは、ほとんどの王侯貴族が魔法を使うことができる。
炎、水、風、地の四属性が基本で、たまにその四種には分類できない特殊能力持ちが生まれる。
魔力を持つ者同士が結婚し子を為したのが今の貴族の源流であるため、魔法を使える者の多くは貴族だ。
魔法使いとしての能力が抜きんでていれば、平民が貴族と結婚することも少なくない。
この国の人々は、それほどまでに魔法使いとしての力を重視するのだ。
魔力の有無やその量がわかるのは、10歳ほどのころ。
それぐらいの年の貴族の子供を対象に、水晶玉を用いた能力検査を行う。
そのとき、流し込んだ魔力で水晶玉を割り、
「素晴らしい!」
「天才だ!」
「きっと王家に嫁ぐことになる」
と担ぎ上げられたのがアメリ・フローレイン……つまり私だ。
水晶が耐えられないほどの魔力を持つ者は、数年に一人見つかるかどうか。
私の年にはもう一人、子爵家の女の子が水晶を割ったそうでそちらも大いに話題になっていた。
同い年の第一王子・テオバルトの婚約者は、私たちのどちらかから選ばれるだろうとみなが噂して……。
結局、魔法の名家でもある伯爵家生まれの私が選択された。
ここまではよかったのだ。
問題はその数年後。魔力量だけでなく、どんな能力を持つのかがわかってからだ。
魔力の有無と属性は10歳前後で判明するが、実際に魔法が使えるようになるのは少しあとなのだ。
水晶が赤く光ったら炎属性、青く光ったら水、と色と属性を紐付けることができる。
私のときは……無色。特殊能力枠だった。
四属性に分類できない場合、どんな力が発現するかわからない。
実用性のない力のこともあれば、国家を揺るがすほどの能力を秘めている場合もある。
私は後者のはずだと期待され、能力が発現するときを皆が今か今かと待っていたけれど……。
12歳の誕生日を迎える直前に私が使った魔法は、花を咲かせる。たったそれだけだった。
それでも、最初はみな大盛り上がりだったのだ。
「食料問題が解決する!」
「薬効のある花を大量に咲かせれば、薬が作れる!」
「農作物を育てるために使う水を減らせる!」
なんてふうに。
種も水もない場所に、ぽんっと花を咲かせる力。
必要なのは私の魔力のみ。その魔力は底なしに近い。
みんな沸いて沸いて、救世主だ、王子の婚約者にふさわしいって、これでもかというほどに私を褒めたたえた。
このままいけば、私と結婚するテオバルトも王太子決定だろうと言われたりもした。
けれどその波も、すぐに引くことになる。
私が出した花は数日で消える。育つこともなければ、香りも効能もない。
ただただ、花の見た目をした魔力の塊がぽんと出てくるだけ。
私の能力は、ただ綺麗なだけで実用性は皆無だったのだ。
最初とは打って変わって、こんな力が王家に遺伝したらどうするの、と聞こえるように言われるようにもなった。
そして、私の力がなんの役にも立たないことがわかって間もなく――。
「すまない。アメリ。僕との婚約を解消してほしい」
第一王子テオバルトに、婚約を解消された。
私だって、まあそれなりに傷ついた。
魔力量が多いとわかったときも、花を咲かせる力があるとわかったときも、みんなに散々持ち上げられて。
王子の婚約者にまでなって。
なのに、能力が「ハズレ」だとわかった途端、梯子を外されて。みんなさーっと引いていった。笑っちゃうぐらいに、さーっと。
テオバルト本人は婚約解消を望んでいなかったようだけど……。
王に「婚約者を変えろ」と圧力をかけられてしまっては、逆らえなかったのだろう。
みなの期待を一身に背負う未来の王太子妃から、一転。
私は「フローレイン家のハズレ姫」と呼ばれるようになった。
婚約解消のとき、テオバルトには強がって笑顔を見せたけれど、本当はつらくてつらくて仕方なくて。
それからしばらくは、
「期待外れ」
「殿下もとんだハズレを引かされたものだ」
「早いうちにわかってよかったよ」
「魔力量だけ高くても能力がこれじゃあねえ」
なーんて陰口が聞こえてくるたびに泣きたくなった。
家族は庇ってくれたけど、お父様もお母様も、本当は私のことを「ハズレ」だと思ってるんじゃないかって、怖くなった。
転機が訪れたのは、ハズレ姫の烙印を押されてから半年ほどが経ったころ。
フローレイン家を訪れたある人が、私に向かってこんなことを言ったのだ。
「実用性はなくても、芸にぐらいは使えるんじゃないですか」
後になって思えば、ただの嫌みだ。はんっと鼻で笑っていた気もする。
けれどそのときの私には、「あなたの能力にも使い道はありますよ」と言われたように思えた。
だって、芸だよ。芸って、人を楽しませるためのものだ。
なんの役にも立たないと思ってた力で誰かを喜ばせることができるのだとしたら――それはとても嬉しいこと!
その言葉を聞いた私は、使用人の制止を振り切って家を飛び出し、町におりた。
泣いている女の子。喧嘩をした子供たち。一人俯く大人。
色々な人の前でぽんっと花畑を出したり、一凛の花を手渡したりした。
そうすると、みんな驚いたあとに笑顔になってくれて。
ああ、私の力も誰かの役に立てるんだ、喜んでもらえるんだって知ることができた。
それ以降、私は自分の魔法を誰かを喜ばせるために使うようになった。
そうすると私を罵倒する人はだんだんと減っていき、いつしか、社交の場で魔法を披露して欲しいと頼まれるようにもなっていった。
私が魔法を使うと、みんなが笑顔になる。それが、とても嬉しかった。
能力そのものはハズレだったかもしれない。けれど、それも使いようだ。
婚約解消から3年が経ち、15歳となった私はそう思えるようになっていた。
けれど、新しい婚約者はいない。
「……最近は『いい力だ』って言ってくれる人も多いけど、やっぱり、結婚相手としては微妙なんでしょうねえ」
王城で開催される舞踏会に、盛り上げ役として呼ばれた私ははーっとため息をつく。
私が咲かせた花は放っておいても数週間後――習熟度が上がり、花の持ちもよくなったのだ――もしくは任意のタイミングで消える。種類も量も自在なうえ、片付けも楽だからこういった催しにはよく呼ばれるのだ。
開会の挨拶とともに会場に花を咲かせ、役割を終えた私は踊ることもせずこんな愚痴を言っている。
「いい力、か……。しっかりわかってる人もいるんだね。僕も嬉しいよ」
そんな私の隣に立ち、にこにことするのは婚約を解消したはずの相手・テオバルトだ。
12歳のときは私と身長もさほど変わらず、美少女のようにも見えた彼だが、今ではすっかり男性として成長している。
これはおそらく、甘いマスクのイケメン、というやつだ。
私をこの会に呼び、会場をきれいに飾ってほしいと言い出したのは他でもないこの人だった。
「『ハズレ姫』の私はともかく、殿下はいいんですか?」
「なにが?」
「婚約者も探さずに、私と話していることですよ」
「なにか問題が?」
「なにって……。ええ……?」
15歳となった今も、彼には新しい婚約者がいなかった。
王城開催の舞踏会。婚約者のいない王子も参加。
テオバルトは魔力量も相当に多く、属性も炎とはっきりしており、魔法使いとしても超優秀。
弟が二人いるが、次期国王はテオバルトだろうと言われており、さらには物腰柔らかで見目もよい金髪碧眼の王子様……ときたら、自分こそが妃になるのだとご令嬢たちはもうぎらっぎらだ。
なんであんたが殿下と一緒にいるのよ、と言わんばかりのご令嬢たちの視線がぐさぐさと突き刺さってくる。
とはいえ、魔法使いとしての素質である程度選別されてしまうため、テオバルトに気に入られれば結婚できる、というわけでもないのだが。
そこに関しては、ハズレ能力を理由に婚約を解消された私が痛いほど知っている。
そのくせ彼は今回のように頻繁に私を呼び出し、まるで仲睦まじい婚約者かのようにそばにいるのだから困ったものである。
「いい加減、元婚約者離れしていただけませんか……」
私が婚約できないのって、この人がそばにいるせいなんじゃないの? とも思えてくる。
わざと大げさにため息をつき、呆れたように言ってみてもテオバルトはいい笑顔で「ははは」と笑うのみ。
「笑ってる場合じゃありませんよ、もう……」
テオバルトは未だ、最も親しい異性のポジションにいる。
涙する彼に背を向けたあの日、私はもう二度とテオバルトに会わないぐらいの覚悟をしていた。
テオバルトならすぐに次の婚約者が見つかる。だから、過去の人間が邪魔をしてはいけないと思ったのだ。
それなのに、一体どういうことなのだろう。テオバルトのほうから呼び出してきて、ぴったりとそばにいるこの状況は。
「殿下のことがよくわかりません……」
「……うーん。近いうちにわかるかも?」
「なにがですかあ……」
私だって、伯爵家の娘としてそろそろ結婚相手を決めたいんですけどお!?
そんなことを考えつつも、テオバルトを振り切ることはできないまま閉会が近づいていく。
***
この国の第一王子テオバルト・ヘクセレイは、12歳のとき、アメリ・フローレインとの婚約を解消した。
その原因が彼女の能力が「ハズレ」だったからであることは、貴族のみならず平民までもが知っている。
多くの人々がアメリを否定する言葉を吐き、彼女の心を踏みつけた。
そのことにひどく憤りながらも、最も彼女を傷つけたであろう人間が、僕……婚約解消をした張本人、テオバルトだ。
魔力量で選ばれた婚約相手だったけれど、10歳の僕はすぐにアメリのことを好きになった。
ふわふわとした桃色の髪に、緑の瞳。
伯爵家のお嬢さんなのに、ちょっとお転婆で。よく笑って。
「検査用の水晶を壊したって本当?」
「はい」
「……見てみたいな。やってみせてくれる?」
「わかりました!」
こんなやりとりの後、城で保管されていた水晶を勝手に持ち出して壊したのもいい思い出だ。
ちなみに僕は「本当にできるんだ!」と大盛り上がりした。
とてつもない魔力で水晶を破壊するという行為は、男児が好きなやつだったのだ。
……そのあとは、貴重なものをわざと壊してはいけないと二人一緒に怒られている。
彼女の能力が花を咲かせることだとわかったときも、僕はアメリらしい力だと嬉しくなった。
僕はこのまま、元気で明るいアメリと共に歩むことができると信じていたし、それを望んでいた。
けど――。
「テオバルト。アメリ嬢との婚約は解消する」
「……え?」
アメリが咲かせる花になんの力もないとわかった途端、父でもある王はこんなことを言い出した。
この国は、魔法至上主義。そんな能力が王族に引き継がれてしまっては困る、ということだろう。
当然、僕は抵抗したけれど、12歳の王子が王の決定を覆せるわけもなく。
僕は悲しみで引き裂かれそうになりながらも、アメリに婚約解消を告げた。
けれど、本当に彼女の手を放すつもりはなかった。
いつか、僕が自分の意思で婚約者を決められるようになったとき。
「絶対に、アメリを迎えに行く」
そう誓っていた。
あれから3年。
最初は「ハズレ姫」と言われて沈んでいた彼女も、今では笑顔を見せるようになっている。
人々を喜ばせるために力を使うようになったアメリは、フローレイン領のみなに慕われ、「花咲き姫」なんて呼ばれているようだ。
彼女が咲かせる花には、香りも効能もない。逆を言えば、病気や体質の関係で花をそばにおくことが難しい人にも悪い影響が出ないということにもなる。
アメリはフローレイン領の様々な施設をまわり、多くの人々に笑顔を届けていた。
ハズレと呼ばれた伯爵令嬢が、その力で人々に活気を与えている。
多くの人に蔑まれたというのに、その心は優しいままだった。
アメリ・フローレインに関するそんな噂は、フローレイン領を超えて国中に広まっている。
僕が定期的に彼女を王都に呼び出し、貴族たちの前で魔法を披露してもらっているため、貴族たちの間でも肯定的な意見が出始めている。
中には、この会にはアメリも参加するのかと、わざわざ確認してくる人もいるぐらいだ。
彼女の魔法を見るのがよほど楽しみなのだろう。
王が自ら「アメリ嬢も呼ぶように」と言い出すことも増えてきて、僕は内心「ほらアメリは素晴らしいだろう」と勝ち誇っている。
とある日も、僕は王城にアメリを呼び出し、ある国の使節団に魔法を披露してもらった。
アメリの圧倒的な魔力量を持ってすれば、広いホールを花でいっぱいにするぐらいは簡単なのだ。
さらには持病等にも影響しないとなれば、どういった人であっても一面の花畑を楽しむことができる。
アメリのおかげで場の空気もよくなり、交渉も成立。国の上層部も「アメリ嬢のおかげだ」と笑顔を見せていた。
「……そろそろ、かな」
「なにがです?」
王城の庭を二人で散歩しながら僕はそう呟く。
外交の場で活躍した彼女を労わるため、お茶をしたあと本人の希望で庭を散策している。
彼女は昔から木々や花が好きで、婚約者だったころはよく一緒に外で遊んでいた。
……結局、彼女を放すことはできなかったから、解消後もそれなりの頻度でこうしているけれど。
彼女の力は、たしかに実用性はないかもしれない。けれど、人の心を照らし、和ませることのできる素晴らしいものだった。
そのことは、多くの人に伝わり始めている。
だから、今ならきっと。アメリと婚約したいと言っても、能力を理由に反対されることはないだろう。
結局、成長した僕の力で掴みとる婚約というよりは、アメリの人柄と能力のおかげになりそうだけど――。
そんな彼女の強さもまた、愛おしくてたまらない。
今更他の人なんて考えられないぐらいに、僕はアメリに心奪われていた。
いつもなるべくアメリのそばにいるのだって、他の男を追い払うためだ。
僕に睨まれるからか、彼女にはまだ婚約者がいない。彼女の「邪魔」をした人間として、しっかり責任を取りたいと思っている。
「アメリ。12歳のとき、言ったよね。きみを迎えに行く。待っていてって」
「……へ?」
「僕が理由もなく婚約せずにいたと思ってる?」
「……え? え?」
「あと少しだけ、待っていてくれる?」
戸惑うアメリの桃色の髪をかき分けて、額にキスを落とす。
同じく婚約者のいない彼女は、たったそれだけの触れ合いで湯気が出そうなほどに顔を真っ赤にした。
なんとなくわかっていたけれど、アメリは僕の「迎えに行く」という言葉をまともに受け取っていなかったようだ。
理解が追い付かないようで、もはや「え?」としか言ってもらえない。
……僕のほうはずーっときみにアピールしていたつもりだったし、婚約からの5年間アメリだけを見てきたのにこれだから、ちょっと拗ねたくなった。
「迎えに行くと言った件、僕はずっと本気だったよ。きみ以外の女性と結婚する未来なんて、これっぽっちも見てなかった。これから、父上に『アメリと結婚したい』と伝えたいのだけれど……いいかな?」
「へ、へあ……」
ぎゅっと彼女の手を握りながらそう伝えても、アメリからは変な声しか出なかった。
けれど根気よく「好きだ」「結婚して欲しい」と伝え続けると、彼女もようやく話が飲み込めてきたようだった。
「……私のようなハズレでも、テオバルト様と結婚できるのですか?」
「きみの力はハズレなんかじゃないよ。もうみんなわかってる。きみ自身が、それを証明した」
「っ……!」
「アメリ。改めて言うよ。僕と結婚してほしい」
「……はい」
婚約解消から、3年。
アメリの力が国にも認められ始めたタイミングを見計らってのプロポーズは、受け入れられた。
それから間もなくして、アメリ・フローレイン伯爵令嬢は第一王子テオバルト・ヘクセレイの婚約者として返り咲くこととなる。
今度はもう、誰も反対などしなかった。
二人の結婚以降、王家には稀に花を咲かせる力を持つ子が生まれるようになり、平和と繁栄の象徴として歓迎されたとか。
殿下の愛しのハズレ姫 ~婚約解消後も、王子は愛する人を諦めない~ はづも @hadumo
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