第56話
「小春、好きよ」
小春からたくさん言われてきた言葉を、これからは私も返していきたい。
「ん……雛子さん、嬉しいです」
目は虚ろで頬も紅潮しているけど、かすれた声でしっかりと意思表示してくれる。
「大丈夫? 無理させちゃったかな」
初めてだから加減がわからない、というか、私の方が夢中になってしまってまぁまぁ激しかった……ような気もする。
「平気、もう少ししたら回復するから」
今にも睡魔に負けそうな小春が、健気にそんなことを言う。
私はさっきまでの熱をクールダウンしようと少し離れ、やっぱり可愛いなぁってシーツにくるまった小春を眺めていたら。
「雛子さん、来て」
白い腕がこちらに伸びてきた。
「んん」
そんなの行くに決まってる、尻尾があったならブンブン振り回してるよ。
肌を合わせれば、先ほどまでの記憶も蘇る。我慢できずに小春のサラサラな髪に口付ける。
全く心配することなんてなかった、手を伸ばせばそこに愛しい人がいて微笑んでくれる。触れ合えばお互いの思いが何となく分かり合えて通じる。
肌の柔らかさ温かさ、声の艶やかさ、気持ちの昂り、何もかもがピッタリ合わさったような感覚。
「ほら大丈夫だったでしょ?」
祐ちゃんの得意げな声が聞こえてきそうだな。
「雛子さん? 何考えてるんですか?」
いつの間にか目の前に小春の顔があり、見上げる形になっていた。
「さっきの小春、可愛かったなって」
「もう、誰のせいですか」
やだなぁ、うちの子むくれても可愛じゃないかぁ、デレデレと思考が揺れて油断していた。
「え、ちょっと」
小春が消えたと思ったら、潜ってる?
「わっ、そんなところ触ったら……んんっ」
「今度は雛子さんの可愛い顔、見せてくださいね」
小春の反撃にあい、秒でメロメロにされたことは祐ちゃんには黙っておこう。
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