初めての夜
第54話
こんなに週末が楽しみだったのは、いつ以来だろう。
恋人が出来た、ただそれだけの事なのに。どこへ行こうか何を食べようかどんな話で笑顔を誘おうか、世のカップルはいったいどんなことをしているのか検索しちゃったりして。
「飯田課長、部長からの伝言です」
渡されたメモを見て、一気に気持ちが萎えた。土曜日に休日出勤せよと?
はぁ……まいったな。
日曜日は、小春は友達に会う約束をしてると言っていた。だから土曜日にデートするつもりだったのに。
いくら嘆いてみても、休日出勤は変わらないし、小春に連絡しなきゃな。こういうことは早い方が良い。
さてどうするか、リスケは私の得意分野だ。
休日出勤の仕事量はっと、お昼までに終えられるかな。土曜日のうちに済ませたい用事もある。うーん、空いてる時間は夜だけかぁ、、え、夜?
一瞬で身体が熱くなる。
「やばっ」
いつかの夜がフラッシュバックしてしまったわ。
「どうかされました?」
「いえ、何でもないわ」
仕事に集中しなきゃね。
「あ、雛子さーん」
私を見つけた小春が手を振っている。
ねぇ、前から薄々気付いていたけど、私の彼女可愛くない? そんな目立ったら周りに小春の魅力がバレちゃうじゃない!
心の中で独りごちながら近付いていく。
「お待たせ、小春」
「おつかれさまです、雛子さん」
語尾にハートマークがついていそうなニコニコ顔で出迎えられ、私も自然と同じように笑顔になる。
どうしても会いたかったから(主に私が)私の用事に付き合ってもらう形となった土曜日の午後。場所は美術館の一角、私の従姉妹が写真展を開いている。
挨拶だけしたらすぐに帰ってデートを楽しむ予定だったのに……
従姉妹の祐と小春が意気投合して、何故か一緒にご飯を食べることになった、しかも祐の彼女の手料理をだ。そしてこれが絶品ときているから、断ることなんて出来やしない。結局二人ともしっかり楽しんでしまった、持つべきものは理解ある従姉妹とその彼女だ、なんてね。
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