第51話
「ねぇ、今夜時間ある? うちに来ない?」
もう個展は終了時間となっていた。
祐さんはキラキラと瞳を輝かせてさらに言う。
「お祝いしようよ」と。
「今回も個展は盛況だったみたいだね、おめでとう」
雛子さんが穏やかに笑うが。
「違うよ、雛ネェのお祝い」
「へ、なんで?」
「私、雛ネェには幸せになって欲しいんだ。ずっと心配してたんだよ、このまま一人なのかなって。そりゃ一人でも幸せにはなれるけど、信頼できるパートナーがいればそれは素敵なことだから。ね、だからお祝い」
まだ会って間もないけど、祐さんが雛子さんを慕っているのは凄くわかるから。
「私は大丈夫ですよ、雛子さんのこともっと知りたいので、いろいろ教えてください」
「小春?」
「うんいいよ、はるちゃん。雛ネェの恥ずかしい話いっぱい教えてあげる」
「ちょっと、やめてよ」
「さっき連絡したから、うちのがご飯作って待ってるから、どう?」
「えっ、玲香ちゃんのご飯? それは魅力的なお誘いね……小春、本当にいいの?」
「はい」
「よし、決定!」
祐さんに押し切られる形とはなったが、雛子さんも嬉しそうだし、私は仕事以外の雛子さんの素顔が見られそうだとワクワクしていた。
道中、コッソリと雛子さんが言う。
「せっかくのデートなのにごめんね」
なんだ、そんなことを気にしていたのか。
「大丈夫です。お泊まりの準備はしてきたので夜は二人で過ごしましょう」
「あ、うん、そうね」
何故か歯切れが悪く、ほんのり顔を赤くさせている。あれ、今の私の言葉ってお誘いみたいになってないか? そんなつもりじゃなかったのに。いや、ないこともないけど……
ワタワタしてたら、いつの間にか一人になってた。
「あ、雛子さん待って」
先を歩いていた雛子さんに追いつくと、手を出してくれたのでしっかりと繋いだ。
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