第52話
祐さんの家には玲香さんという女性がいて。
「うちの奥さん可愛いでしょ」
という惚気満載の紹介をされた。
同性なので婚姻は出来ないけれどパートナーシップ宣誓はしているという。
それで、私と雛子さんの関係を知っても驚かなかったどころか喜んでくれたのか。
雛子さんの言うとおり玲香さんの料理は絶品で、おかわりしてしまった。なんでも職業はパティシエーヌらしく、デザートももちろん手作りで。
「雛子さん、これお金払った方がいいんじゃないですか?」
「そうだよね、ケーキ屋さんじゃなくてカフェでも繁盛しそうよね」
そんな感想を言い合った。
雛子さんと玲香さんが洗い物をしている間に、私と祐さんでテーブルの片付けをした。
「はるちゃん、雛ネェのことよろしくね。捨てないであげてね」
「え、捨てるなんて、絶対ないです」
「いやぁ、仕事は出来るかもしれないけど、私生活はへっぽこだよ、恋愛偏差値低いしさ、こんなはずじゃなかったってーー」
「思いませんよ絶対。そういう一面があったとしても可愛いじゃないですか、それにだれよりも優しいし」
「そっか、良かった」
え、涙ぐんでる? 私何かした?
「私がね、玲香と暮らすことにした時、親も親戚も大反対でね、今もほとんど縁は切れてる状態なんだけど、雛ネェだけは私たちの味方してくれたんだ。凄く心強かった。うん、優しいのは間違いないよ。いやぁ、ほんと良かった」
あ、嬉し泣き? 雛子さんに、そこまで感謝してるんだろうな。
「ちょっと、祐ちゃん泣いてるの? え、小春に何かしたの? ちょっと聞きたいことあるから来てくれる?」
「は? 泣いてるの私なのに、なんでそうなるの?」
「手出そうとして、こっぴどく振られたとか」
「んな訳ないでしょ」
言い合いながら、別の部屋へと入っていった。
「あの二人、いつもあんな調子だから気にしないでね」
玲香さんがお茶を持って来てくれた。
「仲良しなんですね」
「そうね」
「祐さんと玲香さんも仲良さそうでお似合いです、もう長いんですよね」
「そうね、いろいろあって途中離れた期間もあるけど、腐れ縁かしら」
言葉とは裏腹に、玲香さんの微笑みには祐さんへの信頼が滲み出ていて、理想のカップルだなぁと思った。
「じゃあ雛ネェ頑張って、陰ながら応援してるから」
「応援はしなくてもいいから、誰にも言っちゃダメだからね、玲香さんにも言わないでよ」
「へいへい」
言い合いというより掛け合いをしながら部屋から出てきた二人に、玲香さんと視線を合わせて笑う。
「では、そろそろお暇しましょうか」
雛子さんの一言で、祐さんと玲香さんの家を後にする。楽しいひとときだったなぁ、また会いに来たいなぁ。
穏やかな気持ちに浸っていたが、そういえばこれからは、雛子さんと二人だけだ。もしかしたら甘い夜になるのかと思うと、急に胸がドキドキしはじめた。
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