忘れられない告白
第43話
『雛子さん、昨夜は申し訳ありませんでした。お酒を飲みすぎて記憶をなくしていました。私の発言は、どうか忘れてください。本当にごめんなさい。もう二度とお酒は飲まないと誓うので許してください』
そんなメッセージが届いた。
あれを忘れろと言うの?
それは無理よ、小春。
酒に酔った上での発言だというのは、あの時すでにわかってたよ。だけど、いやだからこそかな、あれが貴女の本音なんでしょ。
私はあれを聞いて、堪らなく貴女に会いたくなった、きっと近くにいたら飛んでいったと思う。それ程、嬉しかったの。ただ、それと同時に申し訳ない気持ちでいっぱいにもなったの。今まで貴女をどれ程傷つけていたのかと、私の中途半端な行動を反省したわ。
一時的に帰った時に、貴女に会わなかったのも連絡さえもしなかったのも、私の弱さのせい。一瞬でも会ってしまったら、戻りたくないって思ってしまうから。
しばらく会えなくなったことで、どれ程貴女の存在が大きかったのかを思い知らされたわ。
小春、貴女の言う通り、私は大バカものよ。
それでも、そんな私を慕ってくれるなら。
『今晩、話がしたいので時間とってもらえるかしら。出来ればビデオ通話がいいな、返事待ってます』
そう、メッセージを送った。
画面越しだけど、久しぶりに見る小春の顔は真剣そのものだった。
「ごめんなさい!」
開口一番、頭を下げる。
「小春の頭頂部しか見えないんだけど……」
不満を口にするとようやく顔を上げてくれた。
「謝る必要なんてないわよ、あれが小春の本音なんでしょう? それとも真っ赤な嘘なの?」
「それは……もちろん、雛子さんを好きな気持ちは嘘じゃない。でも、バカとか言っちゃったし」
「そうね、他の人にはバカとかは良くないけど、私に対しては真摯に受け止めるわ」
「いえそんな、バカは私です。すみません」
「結構酔ってたみたいだけど、あの後大丈夫だった?」
「はい、小林さんの家に泊めてもらったので」
「そう、良かったわ」
「あの雛子さん、怒ってない……ですか?」
あぁ、そうか。いきなりビデオ通話って言ったからお説教だと思ったのか。
「怒ってるように見える?」
しばらく見つめ合った後、ハッとした表情をして。
「ごめんなさい、こんな時に見惚れてしまいました」
なんて可愛らしいことを言う。
「あのね、小春。これから交渉の正念場に入るの、だからしばらく連絡が取れないと思うの。2週間いや1週間で何とか、良い報告を持って帰りたいと思ってる。だから……帰ったら返事をするから、待ってて」
小春は今度は目を丸くして驚きながらも、頷いてくれた。
私は今度こそ、小春に向き合う覚悟を決めた。
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