第31話

 どうしよう、何着て行こう。仕事じゃないから余計に迷う。あ、休日に課長に会うなんて初めてじゃないか? どうしようほんと迷う。ほんの少しでも可愛いって思ってもらいたいけど、あざといなんて思われたら嫌だしな。何より、課長の隣を歩くわけだから釣り合う服にしないとなぁ。

 いろんな組み合わせを試して着てみる。1人だけのファッションショー、こんな時間も楽しい。これって何だかデート前みたいだなぁと、浮かれながらの就寝。


 駅前での待ち合わせ、早めに到着。ドキドキワクワクしながら待つのもデートの醍醐味。

「ごめんなさい、お待たせして」

「いえ、私も今来たところです」

 言いながらにやけてしまった、これも定番だから。

「ん?」と、不思議そうな顔をされたけど気にしない。

 うん、やっぱり課長の私服姿は素敵だ。

「さ、行きましょう。何を探すんですか?」

 古書店で探し物をするという課長に、無理言って一緒に行きたいと頼んだのだからしっかり探さなきゃ。

「そうそう、これ、プリントアウトしてきたわ」

「雑誌、ですか?」

 古いビジネス本のようだ。

「今度の交渉相手のことを調べてたらね、この雑誌のインタビューを受けていた事がわかったの、でも内容まではネットには書いてなかったから知りたくて」

「そこまで必要なんですか?」

「通常では必要ないんだけどね、どうしてもこの人を堕としたいって思ったら何でも知りたいじゃない?」

 あぁ、確かに。

「課長は何かの雑誌のインタビューを受けたことはないんですか?」

「え、ないけど……」

「あ、そうですよね、あはは」

 あったら絶対に読むのに。


 山本さん相変わらず面白いこと言うわねぇ、と笑われながら歩いていると最初の古書店に着いた。

 中へ入ると思ったより広くて、手分けして探す。店員さんがいれば聞いてみる。

「次へ行きましょうか」

「はい」

 3店目にして見つかった、なかなかの達成感である。課長が嬉しそうにしているから、尚更だ。

「ありがとう山本さん、少し休みましょう」

 丁度よい時間でもあったので、店舗脇のカフェでお茶をすることにした。

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