第24話

「おはようございまーす」

「おはよう」

 よし、今日は他に誰もいない。

「課長、あのっ」

「ん?」

「もしお仕事落ち着いていたら、また食事に行きませんか?」

「あ、そうね。約束してたわね」

 そう言って手帳を確認する。

「月末は避けた方がいいから、来週の金曜日でどうかしら?」

「はい、大丈夫です」

 良かった、嬉しいっ。


「あ、そうだ課長、良かったら食べてください。スコーン作ってみたんです」

「え、どれ? 本当だ可愛い。一つ頂くわ」

「あ、コーヒー淹れますね」

「いいわよ山本さん、自分でやるから」

「でも」

 いつもそう、課長は雑用を自分でやろうとする、課長なのにだ。

「自分が飲むものだからね」

「じゃ私も飲みます」

「なら一緒に淹れよう」

 二人で休憩スペースへと移動し、ドリップコーヒーにお湯を落とす。フワッと良い香りが漂う。ん〜幸せ過ぎる。


「ここにいらしてたんですね」

 佐野主任がおはようございますと言いながらやってきた。

「あら、おはよう主任も飲む?」

「頂きます」

「これも食べてみてください」

 私は主任にもスコーンを渡す。

「何これ、美味しそう」

「山本さん、中に入ってるのって……」

 課長が一口齧って味わってから聞いてくる、驚いた風に。

「野沢菜です」

「やっぱり? 美味しくてびっくりよ」

「え、本当?」

 主任も驚いている。

「実は課長に頂いた野沢菜をまだ食べきれなくて、せっかくだから何かに使えないかなって思って作ってみたんです」

「まさかスコーンに入れるとは、さすがね」

 主任の口のも合ったようで良かった。

「山本さん、そういうアイデア良いわ、仕事にもどんどん生かしてね」

 うわぁ、感激だ! 課長に褒められちゃった。今日も一日頑張れそうだ。

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