知れば知るほど

第23話

 ふっ、ふふふ。

「お土産貰っちゃった」

 帰宅後、袋から取り出したそれを机に並べ、独り言ちる。

 佐野主任は同じ袋を持っていたから、お土産を貰ったのかもしれないが、その他の人にはなかったと思う。休憩室には、皆さんでどうぞ! というお菓子は置いてあったけれど。

 課長が私に買ってきてくれたお土産って事だよね、そういえば、多かったら分けてって言ってたような気がするけど、そんなことするわけないじゃん。私が全部食べるんだもん、課長のお土産を誰にも分けるつもりなんてない。


「ん〜美味しい、ご飯がすすむわ」

 1人で食べているのについ口から出てしまった。いやマジで、白いご飯が合うからおかわりしちゃったよ。カロリー消費のために、明日は一駅分歩こうと決めた。


 ミスをして凹んで、課長と話をして、課長と食事をして、考えた。私が今やるべき事を。

 恋愛感情を抜きにしても、私は飯田課長を尊敬している、理想であり目標だ。

 たとえこの恋が成就しなくても、きっとそれは変わらない。憧れる課長のようになりたい。

 でもそれは、今すぐには無理だ。ペーペーの私に、大金が動くような取引が出来る訳もなく、そんな力も信頼もない。悔しいけれども当たり前の話だ。

 今自分が出来ることをする、それはシンプルなことだった。

 電話はワンコールで取る、誰かが困っていたら手伝う、時間が空いたら何かやることがないか尋ねる。


 少し前から、早起きを始めた。いつもより数本早い電車に乗るだけでこんなにも違うものなのか、恐るべし通勤ラッシュ! この朝のストレスがないだけで気分も段違い、やる気も出て仕事にも集中出来るというものだ。

「課長、おはようございます」

「おはよう、山本さん」

 課長に、朝一番に会えて挨拶が出来るんだもん。早起き万歳だよ、二度寝なんてもう絶対しない。

 主任は何故か私が早く出社するのを心配している。張り切りすぎてまたミスをするんじゃないかと思ってるのかもしれない。そこは、基本のホウレンソウはしっかり守るつもりだし、浮かれるのではなく、積極的に仕事に励もうと思っている。

 課長にも、寝不足を心配された。くれぐれも無理はしないようにと。それを言ったら課長の方が、夜も遅くまでいるし朝も私よりも早く出社しているのだけど私がそんな事を言える筈もなく、きっと自己管理はしっかりされているんだと思う。そういうところも見習わなければ。

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