第22話
更に次の日も。
「おはようございまーす」
彼女は早くやってきた。
「ねぇ山本さん、いつも早いけれど大丈夫? 始業まで1時間以上もあるけど」
様子を見ようと思っていたのに、つい、口を出してしまった。
「はい、全然大丈夫ですよ」
何故だろう今日はこの天真爛漫な顔に苛立ってしまう。
「昨夜は遅かったんじゃないの? 寝不足では体に良くないわよ」
「え?」
「飲み会だったんじゃない?」
え、待って。私嫉妬してる?
「あぁ、早めに帰ったので寝不足ではないですし、もしもそうでも仕事には支障ないように注意しますから」
「そう、それならいいけど、でも。なんで急に早く出社するようになったのかなって主任とも話してたのよ、早く来ても前残業付けられないわよ?」
あぁ最悪だ、こんな事言いたい訳じゃないのに、私の心の狭さに嫌気がさす。
「あっ、すみません。でも早起きして早く出社するようになってから良いことがたくさんあるのに気付いて。よく言われる、早起きは三文の徳っていうか、ラッシュは避けられるし、時間があると気持ちにも余裕が出来るし、朝のお散歩は気持ちいいし。今、一駅分ウォーキングしてるんですよ、それに……この時間だと課長と話が出来るので」
「えっ?」
「課長と朝一番に挨拶出来ると、その日1日がとってもハッピーなんです」
「あ、そう……なの、それは光栄です?」
なんとも恥ずかしく、妙な返しになってしまったが、悪い気はしないーーというか嬉しい。
「なので、これからも早く来て良いですか?」
「ええ、それは。でも無理だけはしないようにね」
「はい」
こういうところがみんなに好かれる理由なんだろう、彼女を悪く言う人なんていないんじゃないかな、いたら私が張り倒すわよ。なんて、何言ってんだか。
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