一種の暴力、一種の破壊、そして絶望へ――。

『恐ろしい』と感じる作品を拝読するのは久々でした。
『どのあたりが?』と問われると、とても答えられるものではありません。
しかしながら、拝読するのを断念することはありませんでした。これは読了して、自分の心に置いておかなけれれば。そう思ったのです。

作中における心理描写が、見事にあっちにいったり、こっちにいったり。読者の心情もろとも、主人公の心は振り回され、「集合体としての」人間社会の中で押し潰されていきます。

誰も助けてくれないような危機というもの。その存在は、今も「自称」先進国である日本でも起きています。主人公に対する強力な、かつ『きわめて迅速な』救いが訪れることを願わずにはいられません。