第2章 あとがき

これにて第2章『名医になる予定の男』は完結でございます。


現在→10年前→3年前→現在という感じの流れになってしまって、少し読みにくかったかもしれません。


まだまだ技量不足か(汗)


魔女の従者が科学の信奉者である医者。


奇妙な組み合わせとも思われるかもしれませんが、魔術と科学がごった煮になっている世界ですので。


ちなみに、このストーリーはテオフラストゥス(パラケルスス)の逸話を元にして書かせていただきました。


『賢者の石』を持つ放浪の錬金術師であり、同時に“医科学の祖”テオフラストゥス。


それまでの呪術じみた医術を否定し、科学を医術の中に取り込んで、様々な鉱物、化合物を治療に使ったことから、そう呼ばれるようになりました。


その中で今回のような“薬効のない薬”を使わせないために、刃物に薬を縫って治療を促進させるという、一見すると魔術的なやり方で治療を施した事があります。


しかし、複数の患者から、“薬を塗らない方が治りが早い”と驚かれたそうです。


要は、「アホみたいな薬を塗るよりも、傷口を清潔にして人間本来の治癒力に頼った方がマシ」という事をやっていたというわけです。


作中でも、『科学的な根拠に基づく治療を施す魔女』と『呪術じみた薬を使う医者』という対比を用いました。


“薬を塗る”という行為も、一見すると正しく思えますが、“薬効のない薬はやるだけ無駄”というわけです。


まして、逆効果な薬を塗っても、治療が遅くなるだけです。


魔女は知識の探究者であり、同時に伝道者でもあります。


代々伝わる秘薬や秘術を弟子に伝え、正しい処方をする。


しかし、迷信がはびこる社会であれば、ともすればそれは医術ではなく、魔術と捉えられてしまうこともあるのです。


進み過ぎた科学は、魔術のようなものですから。


どこまでが魔術で、どこまでが科学か、それは“為政者おえらいさんの匙加減”というクソみたいな状況だったりします。


魔女狩りに狂奔する方が、よっぽど悪魔じみていますからね。


それを嘲笑っているのが、魔女ヌイヴェルというわけです。


魔女であると同時に、科学者でもあります。


それを知識として受け継いできたのですから。



さて、それでは次章『盤面の駒』もご期待ください!

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