第一話 春は出会いの季節
「――おいアキラ」
暗闇の中、俺の身体が揺すられる。
柔らかい枕の感触を頭の後ろに感じながら、俺の肩に人の手が触れる。
「ん……」
眠いんだ……、放っておいてくれ。
「アキラ! 起きろ!」
今度は至近距離から大声で声をかけられる。寝起きの耳にこの声量はきつい。
うるさいな。眠いって言ってるのに……。
「……ん……っ……?」
「やっと起きたか、おはようさん」
重い瞳を開くと目の前には見知った顔の友人、
俺と同じように眠そうな目をしてはいるが、その雰囲気は焦りを含んでいるように感じる。
「ヤナか……なんだよ……」
「呑気にしてんじゃねぇ! やばいぞ! 遅刻しちまう!!」
「なっ!?」
俺は布団を蹴って飛び上がり、慌てて時間を確認する。
時刻は8:30。始業まで15分を切っていた。
寝起きに冷や汗が流れる。
「走ればギリギリってところか! ……というか、なんでヤナが俺の家に居るんだよ?」
「覚えてないのかよ! 昨日ここで独り身鍋パーティーを開いてそのまま寝たんだぞ?」
前日の記憶を辿れば、確かに鍋をつつきながらヤナの一発芸、インドラ橋で爆笑していたことがヒットした。
ブリッジしながらお腹で酒の缶を飛ばすその光景にお腹がもげるほど笑い転げたのを思い出す。
「……そう言えばそうだった。とりあえず服着替えて、シャワー浴びてる時間は……無いよな。仕方ない、着替えてすぐに出よう」
「おう!」
俺とヤナは飛び出るようにして部屋を出た。
マンションの階段を下り、最高速でエントランスを抜けて、二人で走って10分程度の場所にある大学へと向かう。
俺は大学生だが、一人暮らしだ。
一人暮らしのくせに都心にある、ちょっとオシャレでそれなりに綺麗なマンションに住んでいられるのは、ひとえに母のおかげだ。
世界的に有名なバイオリニストの母は日本に帰って来ることはほとんどなく、住む場所と、手は付けていないが、贅沢できるくらいの生活費を毎月振り込んでくれる。
小学生の時に父が心臓の病で亡くなり、中学の頃にはもう母が居ない生活を送っていた俺は、両親が身近に居ない生活に慣れていた。
『……今日発売のシングルはどんな感じなのかな? 今回も【サキ】ちゃんが作詞したんだよね? 恋愛模様かな?』
走っている最中、覚えのある名前が耳に入り、街頭モニターに目が行った。
どうやら女性歌手に最新曲のインタビューをやっているようだ。
『はい、そうですね……恋をしていても、互いにどれだけ好きでも、叶わない恋があるじゃないですか? 両想いなのに、片想いで、辛い。そういう女の子の気持ちを表現した曲です』
小夏サキ。
俺の一つ下の18歳で、二年前からその歌唱力とルックスで絶大な支持を集めて、彗星のごとく現れた新気鋭アイドル。
アイドルと言ってもユニットを組んでいるとかではなく、今では珍しいソロ活動をしているアイドルだ。
そういう意味ではアイドルと言わず、歌手と言ったほうが良いかもしれない。
悲愛、失恋などを題材に歌ったものが多く、男性はもちろん、若い女性の強い共感を得ていて、発売から半年間オリコンチャートで一位を取っていたこともある。
なによりすごいことは日本だけでなく、海外からも、その歌唱力とルックスで注目を集めていることだろう。
有名な映画などの主題歌になったりと、その人気はとどまるところを知らない。
……もう、俺とは全く違う世界に、紗季は行ってしまったのだ。
「おい、アキラ何止まってんだ? ……ん? あぁ、小夏サキか。良いよなぁ、俺の妹もファンでさ」
街頭モニターを見上げたヤナは映像に映る少女の姿を見て頬を緩めた。
若い女の子にも人気のある小夏サキは日本国民のほとんどが知っている。
有名になり過ぎてしまったのだ。
『サキちゃんはシングルを出した後は、しばらく学業に専念――』
「……行こう、ヤナ。遅刻するぞ」
「カラオケ行っても小夏サキの……え? あ、おう。つか、なんか顔暗くねぇか?」
俺はその街頭モニターから目を背け、大学に向かって再度走り出す。
見ているだけで胸の内側がズンズンと重くなっていく気になったからだ。
足の速いヤナは、先に走り出した俺をすぐに追い抜いていった。
……そういえば、随分と懐かしい夢を見たな。
必死にヤナの背中を追いかけながらそんなことを思う。
――あの花火大会の夜以来、彼女とは会えていない。
二学期が始まったときには、既に彼女は転校していた。
連絡しようにも、メールアドレスを変えられていたし、電話番号も変わっていた。
SNSもアカウントが消えていた。
今思えば、あの花火大会の夜の出来事は、俺にそれなりの理由を与えて別れるための言い訳だったような気がする。
だからって恨みはしない。
もしそうなら、そうしなければいけない要因が俺にあったということだからだ。
振られた側が常に被害者とは限らない。
あれから大学に入り、春夏秋冬を一度繰り返した俺は、比較的冷静に客観的視点で物事を判断できるようにはなっていた。
「やっと校門が見えてきたな! ……ん? 今日何かあったか?」
そんなことを考えていた俺よりも先に、正門前の階段を上り終えたヤナが違和感を感じたのか、立ち止まって首をわずかに傾げている。
「なにって、今日は入学式でしょ? だから昨日俺の家で一年お疲れ様&独り身鍋パーティーを開いたんだろう?」
若干息を荒げながら、俺はヤナの隣に立って校門を見る。
「あ、そっか。なら今日でアキラと出会ってちょうど……ねぇ、あっきぃ~……今日が何の日か覚えてるぅ?」
ヤナはどこから声出してるんだ? と思う、気味の悪い鼻声でそんなことを言ってくる。
「その、地雷系女子みたいな喋り方はやめろよヤナ」
「だって、去年の入学式に俺達が会ったわけじゃん? 丁度一年だろ。彼女が居たらそんなことを聞いてくるんじゃないのか?」
「彼女の件は知らないけど、まぁ、そうだね」
俺の高校は東海地方の片田舎で、ヤナは神奈川の名門高校だったため、高校は別で、大学で知り合った。
だから、俺のあの夏にあった出来事を知らないし、話していない。
進んで言うような話でもないから、という言い訳で、実際の所はあまり思い出したい思い出でもないからだ。
「入学式か……俺達も今年こそ彼女が出来ると良いんだけどな……」
「ヤナは格好いいから、すぐに出来るよ。というより、今居ないことが不思議だよ」
贔屓目なしに見てもヤナの容姿は整ってて格好いいと思う。
事実、一緒に渋谷などに服を買いに行ったときなどに、何度かモデルのスカウトに捕まっていた。
本人曰く、『全く知らない人間に雑誌で顔を覚えられたりするのが嫌だ』とのことで、全てを断っていたが。
「そう言うお前こそ、そこそこいい顔してるだろ? 何回か告白されてたじゃねぇか」
そこそこ……いや、うん。まぁ冴えてはいないと思うけど。
「俺は……やっぱり、人柄をよく知らない人と付き合うのはちょっと、ね。彼女が欲しいとかじゃなく、友人としてお互いのことをよく知って、好きになって、それから恋人として向き合いたいかな」
「女子かよっ!」
うるさいな。俺だって女々しいとは思っているよ。
……一年以上経った今でも、あの花火大会のことを引きずっているんだから。
「ヤナだってよく知りもしない人と付き合いたくないだろう?」
俺の言葉に、ヤナは考えるように間を取って頷く。
「まあそりゃあ、な?」
「ほらね?」
俺もヤナも、純粋なんだ。
ヤナは笑った後、一拍置いて清々しい笑顔を浮かべた。
「そうだな。童貞同士……いや、ミリオタの奴も入れて童貞連合は、夢という名の貞操を高く持とうぜ!」
「そんな絶望的なものに参加した覚えはないんだけど……」
……ヤナは純粋ではないかな。
「おっとやっべ! もうそろそろマジに時間が無いぞ! 校門を駆け抜けるぞアキラ!!」
「うん、そうだね。急ごう! 新年度始まってすぐなのに遅刻なんて笑い話にもならない」
人気のない校門を潜ろうかと思ったけれど、正面から入ると確実に講師、教授の方々に怒られるため、裏口という名の抜け道から中に入った俺とヤナは、人の気配すらない昇降口に向かい、自分のクラス分けを確認しようとする、が。
「あれ? ヤナ、紙が無いよ」
「おいおい、トイレの紙事情を離れててもわかってしまう能力が開花したのか? ハナ貴族使うか?」
「違うよ! 式典実行委員会の紙が無いんだって。あれがないと何したらいいかわかんないんだけど」
本日、俺とヤナは単位欲しさに入学式の実行委員として、新入生の入学式を最高の物にする使命があった。
委員会は割と適当で、当日来て貰えたら指示出すからーみたいな感じだった。いいのかそんなんで。
そんなわけで、春休みだというのにも関わらず俺とヤナは校舎に来ていた。
だからこそ、校舎に指示書のようなものがないとなれば、早くも詰みだった。
「は? そんなわけ……」
「ないでしょ?」
「……ない、な。ちょっと待てよ、確か今日の日程が書かれた紙が入っているはずだ」
ヤナはそう言ってカバンをごそごそ漁り出す。
しばらくして目的の紙を見つけたヤナはその紙に目を通すが、
「やべえ! 入学式の会場ここじゃねぇよ!」
次の瞬間にはそう叫んだ。
「え? じゃあどこ?」
俺たちの通っている坂月大学はキャンパスが二つある。
法学部や経済学部などの文系の学部が、今俺たちが居る場所、千代田区神田にあり、もう一つは本郷の方にある。
そっちは医学部や研究棟が主で、生徒数はあまり多くは無い。
俺は経済学部でヤナは法学部だ。
もしかしたら本郷キャンパスの方かな?
「去年と同じアリーナだってよ」
「え? あ、そういえば、去年は別の会場を貸し切りしてたよね……あれ毎年なんだ……」
随分とデカい場所で、『凄いなぁ、流石都会の大学だ』なんて幼馴染と二人でぼんやりとしながら思っていたけど、どうやら今年もあのでかいアリーナを貸切るらしい。
「アキラ! 式典は9:30からだ。全力で走ればまだ間に合う、急ぐぞ!」
「えぇ!? また走るの!?」
……まぁ、行き当たりばったりなのは今に始まったことではないか。
文句を口にはしつつも、俺とヤナは雑談をしながら会場に移動した。
既に入学式は始まっているようで、受付の事務員のお姉さんに遅刻理由と生徒手帳を見せて中に入った。
会場の二階に登り、空いていた座席に座って、下でパイプ椅子に座っている新入生を見る。
「俺も去年はあんな感じだったな……」
田舎から都会に出てきて、道中に見た高いビルと人の多さに、不安と緊張と、少しの期待を胸に、そわそわしていた覚えがある。
「なんか懐かしいよな」
「そうだね」
ヤナの言葉に生返事を返す。
そういえば、紗季も今年大学に入るのだろうか?
そんなことを考える時点で、やはり俺は未練タラタラなわけだけど。
紗季は高校を2年の夏休みを境に転校していた。
そもそも、芸能活動などで留年とかしているかもしれないし……
……ダメだな。
これ以上考えると、当時の胸の痛みなどが蘇ってきてしまいそうだ。
もうそろそろ、新しい恋を始めるべきだ。
「今日は式典後の片づけだけだよな?」
「そうだったと思うよ」
確か、入学式の後は新入生はキャンパスに移動して説明会とオリエンテーション。
俺たち2、3、4年次は会場の後片付けの後、サークル勧誘か、サークルに入っていない生徒は解散だ。
俺はどこにも所属していないため、自動的に解散となる。
「アキラは今日、バイトか?」
ヤナは何気なく聞いてくる。
「うん。弥生さんに呼ばれててさ」
「酔狂だよな。生活費は振り込まれてるんだろ?」
「まあ、ね。あまり手を付けたくないんだ。学費どころか住む場所まで用意してくれたのに、これ以上迷惑はかけられないからね」
一人暮らしをする俺に、アパートではなくマンションを買ってくれた母に、これ以上負担をかけるわけにはいかない。
せめて、自分の生活費程度は自分で稼ぐ。
これが入学したときに決めたことだ。
……暇な時間があると、どうしても色々考えてしまうから、バイトでもして時間を潰そう。という思惑が隠れているのも事実だけど。
「アキラはホント真面目だな」
「ヤナは終わった後何するの?」
「俺はサークル勧誘」
「あぁ……なるほど……」
ヤナは神代科学研究サークルという少し――いや、かなり意味の分からないサークルに入っている。
なんでも、太古の神々が使うような魔法のようなものを科学的に証明する……という崇高なコンセプトの名の元に食っちゃ寝、呑んで寝を繰り返す、いわゆるダメなサークルの代表例だ。
「集まると良いねー」
無表情で淡々と俺は形だけの言葉を発する。
「なんならここに、入るための紙があるんだが……俺と一緒に世界の深淵を覗かないか?」
「いらない」
「即答かよ!」
過去、神代科学研究サークル、通称『シンケンゼミ』を一度だけ見に行ったことがある。
それはもう狭くて汚い部室に、漫画とラノベとゲーム機とモニターがある引きこもりの手本のような部屋で、1分とかからず部室を飛び出た。
あれ以上居れば、俺はどうにかなっていただろう。
それ以来、二度と怪しげなサークルには近づかないようにしている。
「あそこも慣れれば良いところなんだぜ?」
「住めば都ってこと? 慣れる必要がある場所にわざわざ入りたくないよ」
俺の言葉にヤナは「漫画とラノベは発売日には新刊が3冊は揃ってるんだぜ?」と、正直興味もないことを言ってくるが、それを適当に流す。
『それでは、新入生は指示に従って移動を開始してください。上級生は会場の整理を……』
マイクの音源でそんなことが聞こえ、新入生が外に出ていくのを待ってから片付けを始めた。
会場の片付けを無事に終えて大学のキャンパスに戻った俺は、早速新入生を狩りに……勧誘しに行ったヤナと別れた。
校門を出ようとしたところで、休みが明けてから初めて見る懐かしい背中を見つけ、駆け足で近寄った。
品のある華奢な後ろ姿に声をかける。
「
「……え? あら、アキくん。こんにちは、久しぶりだね」
急に声をかけられて驚いたのか、一つ年上の
肩に掛るか掛からないかの見るからにすべすべそうな髪を風で揺らしながら、微笑みかけてくれる。
聖母のような慈悲深い微笑みが様になっている美しい顔は、左目下に泣きぼくろあり、とても魅力的だ。
医学系の参考書を両腕で抱えるように持っており、大きな胸が強調されている。
……ハナ貴族貰っておけばよかった。心の底からそんなくだらないことを思う。
神田のキャンパスに居るということは図書館帰りだろう。
うちの大学は学部ごとにキャンパス分けされているから、真里絵先輩が所属している医学部は研究棟が主だ。
「お疲れ様です! と、図書室帰りでちゅかっ?」
あっ、噛んでしまった。
美人にはある程度耐性があるとはいえ、この人レベルだとどうしても緊張してしまう。
「ふふっ、そうでちゅよ~?」
ぬわっ! 可愛すぎるだろう!!
俺の噛み言葉を楽しそうに笑った後、真里絵先輩は意地悪そうな顔でイジってくる。
笑い方が不快じゃないのはこの人の才能か、品性だろうな。
「す、すいません。噛んだだけです……もう図書館開いてたんですね」
「そうだよ、今日から空いてるの」
「医学部って大変ですよね。三年次から研修があるんですよね?」
「うん。でも、人を救う仕事だから大変なのは当然だよ?」
パァ~。
万里江先輩の背後に後光が差した気がした。
この人こそ現代のナイチンゲールやでぇ~。
ナイチンゲールは看護師やねんけどなぁ〜。
エセ関西弁が頭に浮かぶほど、脳がとろけている。
「……でっ、ですよねぇ~!」
経済学部の俺には関係のない話だが、あぁ、やっぱり良いなこの人。
初めて出会った時に、まだ傷心中だった俺は、真里絵先輩の優しさに救われるような気がして、異性として気になっていた。
それをヤナに打ち明けたら『俺も好きだっての!!』と殴り合い。
散々拳で語り合い、二人で地面に転がった後は、どっちが先に付き合っても文句は無し。という誓いを立てて拳をぶつけあう、一昔前のヤンキー漫画のようなことをしたんだけど。
……結局、高嶺の花過ぎて告白前に両方が諦めたという過去がある。身の程を悟ったのだ。
今でこそ減ったが、俺が入学してすぐの頃は真里絵先輩は2日に一度は学内外の生徒問わず、校門前で告白されていた。
それを全部断ったため、玉砕した男連中は敬意を込めて『マリア様』又は『修道女』と陰ながら呼んでいる。
「アキくんはこれから弥生さんの所でバイト?」
「あ、はい。そうです!」
「頑張ってるね」
万里江先輩は微笑んでくれる――当然、その笑顔で日々の疲れや二日酔いなどが吹っ飛ぶ。
多分そこらの薬より効いてる。
「生活費のためですから」
「偉いね。お昼ご飯まだだよね? これあげるよ」
そう言って万里江先輩は片手で参考書を支え、カバンから可愛らしい袋を取り出して渡してくれる。
「え? なんですか? これ」
「お昼に食べようと思って今朝作ったんだけど、遠慮せず食べて? 私にはこれくらいしかできないから――」
……もしや、これは……全校生徒が憧れる、『あの』マリア様からの……
「頂戴します!!」
即答する。
もちろんそんなチャンスを棒に振る俺ではない。
据え膳食わぬは男の恥よ。
「アキくんのお口に合うと良いんだけど……」
「なっ!?」
まっまままっまさか、ててっててってっ手作りだと……!?
ふぅ…………俺って、勝ち組じゃね?
「大丈夫です! もう色んな意味で美味しいです!」
「まだ食べてないよね?」
例え、この中に入っているのが車のタイヤだろうと絶対笑顔で完食して見せるし、照れたように頬を朱に染めている真里絵先輩を見れただけで充分だ。
「ゴチになります! 絶賛のコメントとお弁当の箱は当方で丁寧に清掃、包装して翌日お返しいたします!」
「ふふっ、アキくん運送屋さんみたい。そんなに気を使わなくていいよ?」
「いえっ! A4原稿用紙300枚びっしりと感想を書く覚悟ですから!」
「う、うん。そんなに長くなくてもいいけど、感想とかメールで送ってくれると、嬉しい、かな?」
真里絵先輩は恥ずかしそうに下を向いた後、ゆっくり俺の顔を見上げて微笑んでくれる。
かわええ!! つか……脈ありじゃないか?
鋭い俺の感性が告げてくれる。
言っておくけど俺はその辺のラノベ主人公とは違うからね。
そうか、俺のキャンパスライフは今日から始まるのかぁ。
悪いヤナ……俺は先に行くよ。
「じゃあ私はもう行かなきゃ、お仕事頑張ってね?」
「はい! ありがとうございます!!」
俺は弁当箱を左手で持ち、敬礼をする。
その様子に微笑みながら真里絵先輩は俺に小さく手を振って、少し進んでもう一度振り返って手を振ってから校門を出て行った。
まだ一年生の入学HR中で、周囲に人が居ないのが幸いだった……。
もしこの現場を見られていたら、今頃俺は弁当箱を狙ったハイエナ連中に囲まれていただろう。最悪殺されていた。
本当、いい人だよな。真里絵先輩は。田舎に神社くらい建ってても不思議じゃない。
夜に連絡することを忘れないよう頭に入れておきながら、俺もその場を後にした。
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