金の亡者

姉さんの葬式。


喪服で来た姉さんの娘、確か琴は、本当に感情がなくなったかのように、泣きもせず、喚きもせず、一言も喋らず、ただただぼーっとしていた。


目は曇っていた。


親戚の人たちは、気味が悪いと嫌がるが、私はちょっとだけ親近感が湧いた。

おばあちゃんが亡くなった時、私はおばあちゃん大好きっ子だったため、一週間くらい、あのように、表情がなくなったという。まあ、覚えていないが。


姉さんの葬式が終わると、昼食になる。


琴は、何も喋らず、表情が動くこともなかった。

私は、能力関係なく、人の気持ちを読み取る能力が長けているのだが、あの子の気持ちは何もわからない。まあ、表情がないのだから当然と言えば当然だが。



私の持っている遺書は、親戚の人たちに見せていない。



昼食の時間、琴を誰が引き取るかで争いになる。

ただ、大人たちが見ているのは琴じゃなく、琴の持っている姉さんの保険金だ。

まあ、姉さんが私に任せると言っているのだがら、琴のお金……ではないのだろうか、よくわからない。


「私が引き取るわ。家のスペースが有り余っているもの。」

「いや。俺の家には子供が二人いるから、子供に慣れてる。俺が引き取るべきじゃないか?」


話し合っている中、表情を変えない琴。


というか、ほんっとにこの親戚の人たち呆れる。

まるで金の亡者だ。

琴のために、とか言って、本当は金のことしか興味ない。

別に私は琴のことが心配ーだとかそんなことは思ってもいないし、逆に姉さんが全然私の元に来なかった原因とすら思っている。

だって、姉さんの夫と琴さえいなければ、姉さんは私の元にもう少し早く、会いに来てくれたはずでしょ?

私はシスコンだから。本当に許せない。

でも、それよりも。人の心を壊そうとしていることをわかっていないこの馬鹿どもの方がもっと許せない。

でも、今喋ると本当に琴を引き取ることになってしまう。

私は親戚の人たちに怒りながらも、とりあえず黙っていた。

もし琴が酷い状況……つまり、現実を絶望する状態に陥ったなら、親戚の人たちと話そうと思っていたのだ。


だけど一瞬、琴の目に絶望があったのを私は見逃さなかった。

話し合いには参加していなかったが、そろそろ参加した方が良いだろうか。


「ねー」


黙ってた私が発言すると、一斉に親戚全員が私をみてきた。

琴はまたかとでも思ったのか、少し怒りというか、殺意というか。

この世の絶望のような、どこか焦点の合っていないような目で、私を見つめた。


「私その子引き取るよ。」


私は、そう言った。

琴はため息をつき、冷たい目で私をみてくる。

(この人も私のお金に誘き寄せられたのか。)

まるでそう思ってそうな目だった。

しかし、


「だってさー、結局あんたら、この子のために〜とか言ってるけど見てんのはこの子のお金でしょ?私は別に、この子にお金があったってなくたっていい。姉さんにこの子をよろしくって頼まれてるし、私が引き取る。」


と私がいうと、親戚全員が唖然とし、琴はとても驚いたような顔をしていた。

まあ、他人からすると無表情のままなのだろうが、私は表情とか結構敏感なので、よーくわかった。



結局、琴は私が引き取ることとなった。

まあ、当たり前と言えば当たり前なのだろうか。

だって、姉さんの予言は外れることなどないのだがら。






その後、色々と手続きをして、琴は私の家に来ることになった。

琴が色々と部屋を見てまわっているところを私が笑顔で眺めていると、琴が、


「もう知っていると思いますが、自己紹介とか、そもそも会話をろくにしていなかったので自己紹介から始めさせてもらいます。私は有栖 琴。あなた……えっと、お姉ちゃんで、いいですか?」


と言い出した。

私は、琴から喋りかけてくることなんて一度もなく、琴が言った通り、ろくに会話もしていなかったため、琴から喋りかけて来たことにびっくりしたが、すぐ我に返って、


「お姉ちゃん……いい響きじゃん!ちなみに私は有栖 香奈。えーっと、琴のお母さんの妹になるかな。まあおばさんに当たる存在だけど、流石にそんなに歳開いてないし、お姉ちゃんでよろしくね!」


とニコニコ笑顔で言った。

琴は、私でもギリギリわかるくらいの笑顔で、


「よろしくお願いします。」


と言った。


それから、私は部屋の案内をして行った。

部屋の案内をすると、夕方になり、琴は疲れたのかすぐベッドで寝てしまった。

琴は思ったより頭がいいようだ。もしかしたら大学生の私よりも。


しかし、今日は疲れていたのだろう。

ベッドが一つしかないことに気づいていなかった。

私は琴が眠っているベッドの中に入り込む。

琴は、まるで怯えるように震えていて、体はとても冷たかった。



でも、最終的に湯たんぽのようにあったかくなったから、良いとしよう。

……そのせいでいつもより起きるのが遅くなってしまったが。




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前の話はとても短くなっていましたが、その分この話は私にしては長いのではないかと思います!

楽しめてもらえたら嬉しいです!

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この子を笑顔にさせたくて ユリ @corisu

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