第12話 授業の再開

「俺がレティシアと付き合いたいかだって?」

「そ、そうよ!」

「れ、レティシア様ぁ!? な、なななななににににににに」


 何か1人だけ生き物じゃないの混じってないか?


「おーい、ぶっ壊れてんぞこの坊や。まずコイツから何とかしようぜ」


 俺はまるで壊れたゴーレムの様に同じ一文字を繰り返すマクシミリアンを指差しながらレティシアに言う。

 するとレティシアはチラッと彼を見た後……何事もなかったかの様に俺の方に向き返った。


「で、どうするの?」

「いや、あの坊や———」

「だ、大丈夫です、勇者レオン様!! 彼は私達が何とかしますので!!」

「あ、そう」


 今まで1度も言葉を発していなかったエルフの少女が他のエルフ達と共にマクシミリアンを担いで何処かに行ってしまう。

 その際レティシアに親指を立て、レティシアが応える様に同じく親指を上げているのを見逃さなかった。

 勿論、レイナ達が興味津々でこの現場を見ているのも。

 

「随分と慕われてんな、お前」

「お陰様でね。……それで———」


 レティシアがズイッと顔を近づける。

 淡い白銀の瞳は爛々と輝いていた。


「———どうするの? 私と付き合うの?」


 どうする、と言われてもなぁ……。


 正直レティシアを異性として見ていたかと問われれば『ノー』と言わざるを得ない。

 というか完全に弟子か親戚の娘くらいにしか思っていなかった。

 

「悪いけど……俺は遠慮しておくわ」

「……そう……やっぱりね」

「「「「「「「やっぱり?」」」」」」」

「何でお前らが1番に反応するんだよ」


 俺は音速のスピードでレティシアの言葉を復唱するレイナ達生徒組とユミルに思わずツッコむ。

 しかし、俺の言葉は聞こえていないと言わんばかりに興味津々と瞳を輝かせながら我先にとレティシアに質問していた。


「レティシア様はこうなることが分かっていたのですか?」

「まぁそうね。私はレオンが好きだけど……どうせレオンは私の事を弟子か親戚の娘にしか思っていないはずよ」


 その通りなんだが……何故分かるんだ?

 そう言えばあの聖女もやたらと察しが良かったな。


 旅の途中で何か隠し事をしようとしても、何故か直ぐにバレてしまうのだ。

 特に魔術師の爺さんがカジノで借金こさえて帰ってきたときなんかは、全く表情も様子も変わらない爺さんを追い詰めて死ぬほど怒っていた気がする。


「ねぇレオン」

「……っ、何だ?」


 思慮に耽っていたのと突然話し掛けられて一瞬ビクッとする。

 しかしレティシアはそんなこと気にしていない様子で言う。


「前回は魔王の旅があったから諦めたけれど……今回は絶対に諦めないわ」

「……何を?」


 首を傾げる俺に———レティシアは吹っ切れた様にビシッと俺を指差して言い放った。



「———アンタを落とすことよ」












「最近環境が変わり過ぎて疲れるな……」

「センセ、めちゃくちゃ好かれてますね」

「あんな聡明そうな方が……一体不真面目なレオン先生の何が良いんでしょうか」


 レティシアから『今から色々と話すことがあるから』と言われて1度世界樹を追い出された俺達は、本来の目的である魔力運用の出来る場所に向かっていた。

 その道中でニヤニヤと楽しそうに笑みを浮かべるマハトと、首を傾げながら訝しげに俺を見るレイナに絡まれていた。


 これだから思春期のガキどもは面倒なんだよ。

 いや、聖女も神に仕えるから恋愛が出来ないせいでやけに他人の恋愛事情に興味津々だったし……好きな奴は年齢関係なくこういった浮いた話が好きなのかもな。


「というかレオン先生はレティシア様の事を本当はどう思っているんですか?」

「あ、俺も気になります。どうなんですか、センセ」

「アイツが言った通りだな。弟子か親戚の娘って感じでしか思ってなかったな。昔は普通にガキだったし」


 俺がそう言うと……2人は露骨にため息を吐いた。


「これは大変そうですね、レティシア様も」

「そうだねぇ……今の感じセンセは欠片も異性としてみていない様だしね」

「———その話はもういいから、着いたし始めるぞ」


 俺は少し開けた雪が積もった場所で立ち止まり、パチンッと1度指を鳴らす。

 すると、突如雪が一瞬で蒸発し、雪が積もっていたせいで隠れていた魔法陣が顔を出す。


「な、何ですか……この魔法陣……その場に居るだけで酔いそうですね」

「確かに。この魔法陣のせいか周りの魔力濃度が異常に高いんですけど、どういうことですかセンセ」


 2人が口元を押さえながら少し顔色を悪くする。

 少し遅れてやってきたクルト達も同じ様に口を押さえながら苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた。

 唯一ユミルだけは何ともない様であったが。


「それじゃあ皆んなの緊張とかもさっきの件で解れただろうし……魔力運用の特訓を始めるぞ」


 俺は気持ち悪げな生徒達に言った。



「———この魔法陣内で魔法が使えるようになった者から出ることを許す。ただし……出来ない者は出来るまで中からでちゃ駄目だからな」



 俺がニヤニヤと笑みを浮かべながら言うと……全員が一斉に俺を睨んできた。

 

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