第1章 吾輩はお手伝いである。
第1話 夏の日の始まりは、すべての始まりであった。
——キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン——
「うわーい明日から夏休みだー」
6時間目が終わった後、意味も感情もなくつぶやいてみたら、
「いやそれ棒読みで言うべきセリフじゃないでしょうよ」
と、後ろの席から突っ込みが飛んできた。
「だって心から喜んで『明日から夏休みだやったぜ!』とか言えなくない?去年までと違って…」
「え。なんで?」
「は。違う?」
二期制の学校に通う中学生になってしまったが故の『夏休みが明けたらテスト』という現実を見ているのは僕だけなのだろうか。
朝っぱらから先生はテストの話をちらつかせているというのに、目の前の友人・
「もしかしてあんた、テストの心配でもしてんの?――マジメね、あんた」
「そう?」
「マジメよ」
「小鳥遊が暢気なだけでしょ。僕は休み中勉強するんで」
小鳥遊はそりゃご苦労さんなこと、というような顔をして肩をすくめた。
「ていうかあんたんとこ、なんも予定ないの?あたしは家族と世界一周クルーズ乗るわよ」
「んー…。今んとこないけど」
というか、世界一周クルーズに家族で乗るなんて、やっぱりこいつはお金持ちでいらっしゃるんだろうか。でも僕は思ってたよ?前からこいつ、持ってるものが全体的にイイものっぽいし、噂通り隠れ金持ちなんじゃないかって。
「何にもないなら連れてってってあげるわよ、クルーズ」
「いや、だから勉強するんで僕」
「ふっ、つまんないヤツねぇ」
と言いながらも顔は笑っている友人なのであった。
—————————————————————————————————————
「あーあ、世界一周したい」
勉強勉強ってなんかマジメそーに言ってしまったけれども。
実際のところは僕だってベンキョーなんてもんはしたくないんですね、はい。
「小鳥遊のストーカーでもしちゃおうかな、でもだめか、お金がないから乗れないし第一怪しすぎて捕まるぞ。うーんじゃあ小鳥遊に取り憑こうか、いやそれは嫌だな——うーん、一体何言ってるんだろう僕は??」
帰り道でブツブツ独り言を言うこの変人男子中学生は、この後素晴らしくとんでもない予定が滑り込んでくるなんて、これっぽちも思っていなかったのである。
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