吾輩は本に吸い込まれ猫にされた、夏休み中の人間である。

天千鳥ふう

第0話 現状はこの様である。

僕は、猫だ。


いや、生まれつきではなく、今だけ。


もともとは人間なんだけれども、様々なる諸事情がありまして。


「ちょっとそこの猫、早くこっち来なさいよ」


「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ(よびすてにするな)」


「何言ってんのあんた。猫語わかんないから何も言わないでくれる?やかましいだけよ」


さっきから目の前に立つクラスメイト様はヒドイことしか言ってこない。


「まぁまぁ、きっと彼も言いたいことがあるんでしょう。言わせてあげましょうよ、そう怒らずに——」


「にゃんにゃ、にゃんにゃ(そうだ、そうだ)」


「んもー、やっぱりコイツやかましいじゃないっ」


仕方がない。なだめ役の優しい人もいることだし、我慢しよう。


というか、僕はどっちにしろ、このひどいことしか言わないコイツともどうにかやっていかなきゃいけないんだ。




——僕らが現実世界に戻るためには。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る