第17話 まだ俺の話が残っている
さて、彼女との話がまとまって、やっと開放されると安堵した男達だったが、そうは問屋が下ろさない。
さっさとこの場からとんずらしたい気持ちが見え見えである。だいたい根が悪党なだけにこのままとんずらと言う事だってあり得るのだ。
ただ、そこは利口な少女。一枚上手といったところで充分に手は考えているようだ。
それにもう一つ。大事な俺の話が残っている。
「わかりました。それでは善は急げ。今から出発しようと思いますんで、あの…縄の方を解いていただけますか。」
さっさとこの場から立ち去りたそうに、男は任務の遂行を丁重に申し出るが、残念ながら俺の話がまだ話は終っていない。
「調子に乗らないで!まだ早いわよ。」
「うっ」
すぐさま、そう一括する少女の見幕に男達は息を飲んだ。
「まだ、このお兄さんの話が残ってるのよ。」
さて、これからは俺の番だ。眼の前の男達に俺はどの様に見えているのだろうか…
彼女みたいに器用にやる事は出来ないかもしれないが、まぁ、殆どのことは彼女がやってくれた。俺は聞きたいことを聞くだけだ。
俺が見るところ、この頭の切れるやさ男は、状況や、その様子から俺の正体にだいたいの見当はつけているに違いない。
「ちなみに、こちらのお兄さんはいったい何者なんです?」
やさ男は白々しく彼女に質問しする。
「そうねぇ、敢えて言うなら…私の師匠かしら。」
彼女はちょっと考えてからそう答えた。
「師匠!?」
俺はいきなりのことで少し驚いたが、そういえば今朝、彼女とそのような話をしていたのを思い出した。
「まさかこれは固くなっている俺に対したちょっとした助け舟のつもりなのだろうか……。」
そんなことを考えたりもしたが、毒姫に限ってそんな気遣いはないだろう。彼女ならテンパっている俺の姿をを面白がって、ただ眺めているに違いない。
しかし、もし彼女にすこしでもその様な気持ちがあったなら……
「ならば正解だ。」
俺は今朝のことを思い出して、肩の力が少し抜けたような気がした。
次話
『懸賞金が出てるんだよ、金貨100枚の』
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