第2話 プロローグ 作者前書き? その2

 さてと。くどいぐらいに断っておくけれど……。俺は、現代日本からファンタジー世界へと転生した転生者なのだ。


「オープンステータス!!!」って言っても何も出てこなかった系の……。


 そして、女神や神様にも会えなかった系の……。


 いやいや、今さらそんな事は、どうでも良いじゃないか。それはそれで俺は今が充分に幸せなんだから。


 なんたってこっちの世界の俺には目に入れても痛くない、むっちゃくちゃ可愛い妹がいるんだぞ。まぁ住んでる場所は田舎だし、両親が行方不明だし、薬草採取が仕事のド底辺だけど。


 それでもいいじゃねぇかよ。俺は多くを望まないタイプなんだよ!


 でもさぁ……俺。妹に好かれたいあまり……ちょっと調子に乗りすぎちゃったんだよね。



 きっかけはドラゴンの鱗だった。


 そんな最高級ドロップアイテムがそうやすやすと手に入る訳無いんだけど……たまたま道に落ちてたんじゃぁ仕方ないよね。


 そりゃ、そんなのが落ちてたらもちろん誰だって拾うだろう?


 そして……。


 やっぱり誰かに自慢したいよね。


 でもさ……。


 嘘はいけないよ。嘘は。



 例えば、そんな貴重なアイテムを家に持って帰って、大好きな妹に――。


「ほら見てみろ。ドラゴンの鱗だぞぉ。実はなぁ、みんなには内緒なんだけど兄ちゃんは腕利きの冒険者なんだ。お前も北の国境付近に出たドラゴンが退治されたのは聞いてるだろ?あれを倒したのが兄ちゃんだ」


 などと言ってみろ。


 妹はその日からクリクリのお目々をランランと輝かせて、超〜尊敬の眼差しで見てくるぞ。それで、事あるごとに「どうやって倒したの?」とか「お兄ちゃんの剣術を見せてよ〜」などといってくるんだぜ。




 本当……調子にのってゴメンナサイ……。


 たかだか薬草の行商人が、出過ぎた嘘をついてしまいました……。


 今日も、山に薬草を摘みに行くだけなのに……。妹が「お兄ちゃん。今からドラゴンやっつけに行くの?」なんて言って、妹が無邪気に俺の後ろをついて来てさ……。


 罪悪感が半端ないです。あぁ~。今さら嘘だとは言えないよね……。だって俺さぁ。本気で絶対に妹のレイラにだけは嫌われたくないんだよ。



 だから、俺は決めたんだ。でたらめでも良いから、妹に剣術を教えることにするって。「嘘をつくなら最後までつき通せ!」って世間でもよく言うだろ?どうせ直ぐに飽きるに決まっているさ。こんなのは子供の頃の単なるヒーローごっこに過ぎないんだから。


 俺は知ってるんだ。


 なんとかライダーだとか、なんとか戦隊だとか……。テレビで大活躍だったあのヒーロー達が本当は存在しないって知った時、結局みんなも絶望しなかったでしょ?


 幼少期の憧れなんて、たかだかそんなもんなんですよ。



 必要なのは……。漫画かどっかからパクってきたそれっぽい修行方法と、それらしい見た目。そして最後に……ついついのめり込んじゃう様なそれっぽい物語ストーリー




 まぁ、そんな感じで始まった妹のでたらめ修行。


 しかし。そんな修行がことごとく成果を見せて……。妹は若くして救国の英雄『剣聖レイラ』と呼ばれるまでになってしまったんだ……。


 どうするのこれ……。


 初めから全部、俺のでたらめだったんだよ……。なのに妹はそれを全部真に受けて……。



 彼女が憧れた物語……。


 主人公の父親が悪の組織に襲われた話も。


 騎士団の団長が死にかけていた主人公の命を救ってくれた話も。


 団長が主人公の母親と再婚して騎士団長の息子として成長したことも。


 弟が生まれて……団長に疎まれたことも。


 結局、騎士団に居場所が無くなって、遠方の領地への任務に自ら志願した事も……。



 そして………。その主人公が後の世に『千年求敗せんねんきゅうはい』と呼ばれる剣聖へと成長する事なんかも……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る