第1話 プロローグ 作者前書き? その1


 ねぇ。君たちが大好きな物語の主人公ってさ、最初から最強?それとも……初めは……弱い?


 俺はどっちも好きだよ。


 圧倒的な強さで悪人を次々とやっつけちゃう主人公には、本当にスカッとさせられるし……。最初は弱い主人公が、努力の末に大きな壁を乗り越える瞬間も、最高に気持ちがいい。


 そりゃそうだ。リアルの俺達っていうのは初めから強くなんてないし、努力したって乗り越えられない壁なんて山程あるんだから……。せめて物語の中ぐらい……夢をみたいじゃないか。


 たとえ、それが現実味の無い嘘八百の物語と分かっていてもね。



 あのさ。


 実は俺も、これから一つの物語を作ろうと思うんだけど……。主人公は初めから強いほうがいいかな……。それとも……最初は弱くても怯まずに壁を乗り越えて、どんどん強くなっていくほうがいいかな?





 さて。今更そんなことを大真面目に考えている俺は……いわゆる異世界転生者である。


 ってことは、生前読み漁ったライトノベルのストーリーや設定を丸パクリしちゃって……異世界で人気作家として一発当てるのかって?


 う〜ん。おしいけどちょっと違うな……。


 もちろんこちらの世界の物語には……俺つえーも、ざまぁも、人生やり直しも……現代日本では使いつくされた物語の設定なんて影も形もないよ。


 でも俺がやりたいのはそんなことじゃ無いんだ。


 俺はね、別にその物語を世界のみんなに読んでもらいたいなんてこれっぽっちも思っちゃいない。俺は……はっきり言って、たった一人の人間が喜んでくれればそれで良いんだ。

 結果として、その人間を騙す事になってしまうけれど……それでも俺は構わない。


 俺は……。


 今、この瞬間の妹が喜んでくれれば……いや、騙せれば……。


 それで満足なんだ。

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