第6話 牧真マホヨと誘拐事件(後編)

光の結界ライトバリア

 私の光魔法で、ヒメノと自分自身に結界魔法をかける。

 

 それと同時に、私はヒメノの隣――犯罪者グループのど真ん中に降り立った。


「誰だ!」

「動くな!」

 英語なまりのカタコトな日本語で警告をされつつ、「パシュッ! パシュッ! パシュッ!」という空気を切り裂く音が響く。


 男たちの手に持っているのは拳銃だった。


(うっそ、ノータイムで撃ってきた!?)


 物騒な連中ねー。

 銃弾は光の結界に阻まれて、私に当たることなくカラン、カラン……と地面に落ちる。


「なんだコイツは!?」

「その格好、魔法少女か!」

「ちっ、仲間を助けにきたのか!」

 さらに銃を撃ってくるもの、逃走するもの様々だけど、それを見逃したりはしない。


「太陽魔法・導かれる光の矢ライトアロー

 私が放った誘導付きの光の矢が、襲撃犯全員に直撃した。


 ふふふ、上空で全員をマーキングしておいたのよね。

 

 精度はそこまで良くないのだけど、奇襲したこともあって見える範囲には全員に当たったみたい。

 

光の矢ライトアローは、初級魔法ではあるけど直撃するとプロボクサーのストレートくらいの威力がある。

 

 殺傷能力は低いけど、足止めには十分な威力……ってあれ?


「「「「ガアアアアアアアアアッ!」」」」

 誘拐犯の何人かが、獣のような雄叫びを上げた。


(声に魔力マナが乗ってる!)


 ただの人間じゃない。

 まさか魔法使いっ!? と一瞬警戒したけど、すぐに相手の正体が判明した。


「グルルル……」

 数名の男の身長が2メートル以上に膨れ上がり、全身が濃い灰色の毛に覆われた。

 顔は縦長く肉食獣の牙を持つ頭部に変化している。


合成獣キメラタイプの怪人…………狼男ってわけね」


 日本では珍しいけど、ヨーロッパやカナダのほうには多い怪人だと聞く。


 力が強く、俊敏で、耐久力もある手強い怪人。

 光の矢程度では、ダメージにならないだろう。


 狼男の皮膚は硬く、刃物すら通さない。

 小型の拳銃ですら耐えるらしいので、日本の警察だと苦戦していたと思う。


「ガアアアアア!」

「死ねぇ!!!!」

 狼男に変身したうちの二人が、こちらに左右から襲いかかってきた。

 

 少しだけタイミングをずらしてある見事なコンビネーション。

 防弾チョッキすら切り裂くと言われる狼男の、魔力で赤くなった鋭い爪と牙が私に迫った。


(ま、無駄なんだけどね)


「ほい、光の結界ライトバリア

 私の身体を覆っていた結界魔法を大きくする。


 ドン!!


 という音は、二人の狼男が光の壁に激突する音だった。

 狼男は結界魔法を破れずに、頭を強打したようで一人は気絶してもう一人はフラフラしている。


「太陽魔法・光の槍ライトランス

 光の矢より強い魔法を、狼男に投げつける。


「ぎゃああああああああ!」

 怪人が悲鳴を上げた。


 めっちゃ痛いと思うけど死にはしないから。

 ゴメンね☆


 残った狼男が逃げようとしている。


 私は、それよりも速く移動して狼男の腕を掴む。


「うわああああああ」

「はい、おしまい」

 悲鳴をあげる狼男のみぞおちに、光り輝くパンチシャイニングパンチを食らわした。


 狼男は、ぐったいりと崩れ落ちる。

 さて、大体片付いたかしら。



「う、動くな!!!」



 怒鳴り声が倉庫内に響く。

 声のほうを見ると最後の狼男が、ヒメノを後ろから羽交い締めにしていた。


「あんたさぁ……」

「マホヨー、捕まっちゃったー☆」

 緊張感のない声のヒメノ。

 

「お、おい! こいつがどうなってもいいのか!」

 狼男のの鋭い爪がヒメノの白い首元に突きつけられる。


 あれで切り裂かれたら、魔法少女といえどただでは済まない。

 人間なら即死だろう。

 

 私は狼男に拘束されて、絶体絶命の魅惑の魔法少女を…………顔で見ていた。


「ねぇ、ヒメノ」

「お、おい! 動くなって言ってるだろう!」

 ちっとも焦っていない私に、狼男が怒鳴る。

 私はそれを無視して言った。


「さっさと片付けちゃってよ、ヒメノ。あんたなら簡単でしょ?」

「ふ、ふざけるなー!!」

 激高した狼男が、ナイフのような鋭い爪を持つ手を振り上げ……それが振り下ろさっることは


「……な……なん……で?」

 ブルブルと震え、必死でヒメノに爪を振り下ろそうとして。

 しかしできない。


「あれー? 狼男さん、私に酷いことするんじゃないのー? しないのかなぁー?」

 ニヤニヤと煽るように狼男を覗き込むヒメノ。

 いい性格してる。


「か、身体が動かない……」

「ふふふ、違うよ? 身体が動かないんじゃなくて、貴方が自分の意思で動かさないの☆」

 あっさりと羽交い締めされていたはずのヒメノが拘束を逃れる。

 

 狼男は、顔を真赤にして何もできずに突っ立っている。




 ――魅惑の魔法少女マギチャームの『魅了魔法』。




 目が合っただけで、数年来の友人のように信用され。

 

 会話するだけで好意を抱かれ。


 手を触れるだけで、相手は一切の危害を加えられなくなる。


 別名『精神支配』の魔法。


 物理特化である光の魔法少女わたしの真逆の魔法使い。


「じゃあねー、おやすみー。眠りの魔法スリープマジック☆」

 ヒメノの魔法で、狼男はばったりとその場に倒れた。

 ほどなくして大きなイビキが聞こえてくる。 


「終わったよー、マホヨ」

「毎回思うんだけどさー、あんた一人でなんとかできるんじゃないの?」

 正直な感想。


 魅惑の魔法少女マギ・チャームの魔法は規格外だ。


 他にもいろんな精神干渉系の魔法少女は知っているけど、ヒメノほど無茶苦茶な魔法使いには会ったことがない。


「ええー、私ってか弱いからなんにもできないしー。野蛮なことはマホヨに任せたいかなって」


「誰が野蛮よ」

「あいたっ!」

 ていっと、ヒメノの頭にチョップする。



 私とヒメノがそんな雑談をしていると。



「警察だ!!」

「動くな!!」

 ちょうど、倉庫に警察のみなさんも突入してきた。


 きっと、私の魔法を使った音が聞こえたのだろう。


 私の太陽魔法で弱っていた誘拐犯たちは、敢え無く逮捕された。




 ◇◇◇ 




「ヒメノさー、毎回捕まってからヘルプをよこすのやめてくれる?」

「あははー。来てくれてありがとねー、マホヨ」


 私が人質になっていた魔法少女・桃宮ヒメノに苦言を呈すると、彼女は笑って受け流した。


「あはは、じゃなくて。もし私が来なかったらどうするのよ」

「その時は他の魔法少女が来てくれるのを待つけど、今日はマホの予定が空いてるって使い魔のスノウくんに聞いてたから」


 スノウくんとは、ヒメノの使い魔だ。’

 白銀色の毛並みを持つフェネックの使い魔。

 

 ヒメノの使い魔も、うちと同じく自宅待機らしい。

 ちなみに私をヘルプ指名してきたのは、スノウくん。


 あの子もうちの使い魔せっちゃんと同じく、仕事熱心なのよねー。


「空いてないし。私受験生なんだけど? 毎日勉強で忙しいんだけど」

「まじめだなー、マホヨは。魔法少女なら推薦枠使えるでしょ」


「推薦で入って、高校の授業についていけなかったら悲惨だし。私は自力で高校に行くって決めてるの」


「偉い偉い」

 ヒメノがあたまを撫でてくる。


「くっ、あんたは受験必要ないからって余裕ぶって……」


 ちなみに同い年のヒメノは、中学から大学までエスカレーター式の有名私立学校に通っているため受験は必要ない。


 ヒメノの実家はお金持ちで、ヒメノはいいところのお嬢様なのだ。


 ……ふん!

 羨ましくなんてないんだから!


「おーい! こっちの荷物も運んでくれ!」

「はい!」

「慎重に運べよ!」

「うわ……なんだこれ、重っ!」

「入ってるのは全部、拳銃と弾丸だな」

「こいつら何でこんなに武器を密輸して……」

「テロでも起こす気だったのか」


 私がヒメノと雑談している時、後ろからはそんな会話が聞こえてくる。


 警察官たちが犯罪グループがアジトにしていた倉庫を調査している。


 私たちの仕事は怪人を退治することなので、もう用事はないんだけどもしかしたら隠れている怪人がいるかもしれないので、一応待機している。


「ねぇ、ヒメノ」

「なーに、マホヨっち」


「結局、こいつらって何の組織だったの?」

「んー、なんかアメリカだと有名なギャングの下部組織のさらに下部組織で、武器とか麻薬の販路拡大を求めて日本にやってきたらしいよ」


「迷惑な連中ね……」

「あとは組織の戦闘員として、怪人を多数雇ってるみたい」


「へぇ~、怪人を雇ってるんだ。変わってるね」


「感心してる場合じゃないよー、マホヨ。怪人って言えば、組織行動ができないことが弱点だったのに犯罪組織に隠れられたら、私たちの仕事がやりづらくなるよ!」


 そう言われると確かに。

 怪人って基本的には、単独行動が多い。 


「そもそも怪人って力こそ全てみたいな価値観で、人の言うことなんて聞かないんじゃなかったっけ?」


「そうそう。怪人になると人間の価値感を忘れて、怪人の思考で行動するはずなんだよねー。だから普通、人間の犯罪組織に入るなんてあり得ないんだけど」


「ふーん……」

 きな臭い。

 なんか嫌だなー。

 

 怪人と犯罪組織が手を組むなんて。

 私みたいな平和を愛する女子中学生には手が余る。


「光の魔法少女・牧真マホヨさん! 魅惑の魔法少女・桃宮ヒメノさん! 周囲に怪しい者はいませんでした! お帰りいただいて結構です。ご協力ありがとうございました!」


「お疲れさまでした」

「ご苦労さまですー☆」


 警察官さんがやってきて、私たちに報告にきてくれた。

 ついでに『報酬金額』を書いた明細も渡される。


 倉庫の出口へ向かいながら、明細を確認する。


「むぅ……」

 ゼロの数が多い。

 今回の犯罪組織は危険度が高いと考えられてたみたい。

 

「お、儲かってるねー。マホヨ」

「あんたのほうが金額高いじゃない」

 私はヒメノの報酬額を見て言い返す。

 犯罪者のアジトを見つけるためにわざと捕まるという危険を冒しているだけあって、ヒメノの報酬は私より更に高い。


「私はお金のためにやってるわけじゃないしー。ま、それはマホヨも同じか」

「私はお金は要らないわけじゃないわよ。参考書代とか勉強する時のカフェ代に当ててるし。あんたとは違うの」


 桃宮ヒメノの家は、超がつくお金持ちなので魔法少女の報酬よりお小遣いのほうが遥かに多いらしい。

 

 ……じゃあ、どうして担当外の地域まで出張って魔法少女をやっているかというと。


「ねぇ、ヒメノ。あんた犯罪者やら怪人に捕まりにいくのやめなさいよ。いつか大怪我するわよ」


 こいつは、自分の楽しみために魔法少女をやっている。


「大丈夫だってー。私の『魅了魔法』があれば、誰だってメロメロだから」

「怖いなー」

 

 戦闘力はからっきしのヒメノ。

 いつか魅了魔法が効かない怪人に出会ったら、酷い目に……下手したら命を落とす危険すらあると思って忠告するのだけど、この子はいつも楽観的だ。


 倉庫の外にでると、周囲はパトカーが何十台も止まっている。


「送っていきましょうか?」

 という警察の人の申し出を私は断った。

 飛んで帰ったほうがずっと速いから。


「魔法の箒、召喚」

 私は魔法の箒を呼び出し、そこにまたがる。


 すると、乗ると私以外の重みがかかった。

 腰に細い腕が回される。


「ねー、私も一緒に乗せてって」

「はいはい」

 ヒメノは魔法の箒の扱いがうまくないので、仕事で一緒になった時はいつも私が乗せていっている。


 ふわりと、魔法の箒が上昇する。

 人を乗せているので、いつものような急加速はしない。


 東京の夜景を正面に、私はゆっくりと魔法の箒を発進させた。


「ねーねー、お台場に寄って遊んでいこうよ。パンケーキ食べにいこうよー。おごるからさぁ」

「あのね、何時だと思ってるのよ。太るわよ」


「えー、じゃあ前みたいにカラオケ行こ? 歌いたい曲があるんだー。マホっち」

「帰って勉強するから駄目」


 夜遊びを誘ってくるヒメノを無視して私は彼女の家の方向へ魔法の箒を向ける。

 ヒメノの家には何度も行っているので、住所は把握している。


「あーあ、もっとマホヨと一緒にいたいのに」

「あんたさ……、まさか毎回ヘルプ先を光の魔法少女わたしに指定してくるのって、私と遊びたいからって理由じゃないですよね」


「んー、それもあるけど」

「ちょっと」


「私を捕まえる怪人とか犯罪組織って強いやつが多いから、適当な魔法少女にヘルプだしても逆に負けちゃうかもしれないからさ。東京最強のマホなら安心でしょ?」


「……そう言われると、反論できないじゃない」

 確かに今日の相手は出会い頭に拳銃を撃ってきたり、複数の怪人で襲いかかってきたりと危険な連中だった。


 ここに呼び出されたのがこの前助けた新人魔法少女のカリンちゃんだったら……?


 うん、無理。


 私たちはゆっくりと夜の東京の街の上空を飛んでいく。


「マホヨの魔法の箒って乗り心地がいいよねー。速いのに安定性もバツグンだし」

「そうなの?」

 私は他の人の箒に乗せてもらったことがないので、よくわからない。 

 

「あー、いい景色。ねぇー、やっぱりこのまま二人でどこかに行こうよー」

 ヒメノが私にぎゅーっと抱きつきながら、そんなことを言ってくる。


 大きな胸が背中に押し当てられる。

 暑苦しいわね。


 ふと私は気になったことを聞いてみた。


「ねぇ、ヒメノ。あんたって好きな人いる?」

「へ?」

 私の質問を予想してなかったのか、目を丸くするヒメノ。


「マホヨ……今、なんて言ったの?」

「だから、ヒメノって好きな人いるの? って聞いたんだけど」

 

「な、な、な、な、な」

「そこまで驚くこと?」

 私が恋バナをするのはそんなに変なことだろうか。

 あんまりしないのは確かだけど。


「い、いや! まさか、こんないきなり告白されるなんて思わなかったから! でも、私の魅了魔法は男女問わず効果があるから、これだけくっついてるってことはそーゆーこともありえるわ!? う、うん! よし、心の準備はできたわ! マホ! 私は今好きな人いないから! 告白してよいわよ!」


「……ん?」

 何かとんでもない勘違いをされている気がする。


「「……」」

 私とヒメノが見つめ合う。


「え? マホヨって私が好きなんだよね?」

「なわけないでしょ!? 女同士よ!?」


「え? これから私に告白するから、私に好きな人がいないか聞いたんじゃないの?」

「違うわ! じゃなくてー。私たちって来年高校生でしょ? そろそろ魔法少女を卒業したいからさ」


「あー、ねー」

 ヒメノはやっと私の言いたいことが伝わったらしい。


 魔法少女は恋愛禁止。


 恋人ができると、魔法が消える。


 魔法少女を卒業するには、恋人を作らないといけない。 


「なんで? 一緒に20歳まで魔法少女しようよ」

「やらないよ!!」

 なんなの。


 ユミコさんといい、なんで20歳まで続けさせようとするの!?


「え? もしかして、マホヨって好きな人ができたの!?」

 ガーンと、すごいショックを受けた顔をされた。


「いや、全然。どうやったら好きな人ってできるんだっけ?」

「なーんだ」

 ヒメノが露骨にほっとした顔をされる。


「だからヒメって最近好きな人とかいないの?ってのを聞いてみたかったんだけど」

「私が好きな人なんているわけないじゃん。私を誰だと思ってるのよ」


 桃宮ヒメノ――魅惑の魔法少女。


 能力は『相手が自分を好きになる』――魅了魔法。


 要するに、好きな相手を自分に惚れさせる魔法。


 そう思うと迂闊に人も好きになれないのかな。


「大変ね、ヒメノ」

「え? みんなが私のことを好きになってくれてサイコーなんだけど」


「ふうん……そっか」

 表情は完全に本気っぽくて、真意はわからない。


 ヒメノって全然本音を話さないよね。

 

 それからヒメノと私は、だらだらと他愛もない話をして。


 魔法の箒が、港区に入った。


 ヒメノの済んでいる高層マンションが見えてくる。


「そろそろ着くわよー」

「えー、マホヨとの二人の時間も終わりかー」


「別にいつでも会えるでしょ」

「夜に二人で遊ぶのがいいんでしょー。背徳感があって」


「なにいってんだか」

「ね? うちに泊まらない? 今日……両親がいないから♡」

 甘えた声で言ってくるヒメノ。 


「あんたん家、両親いなくてもいつもお手伝いさんいるじゃん」

「まーねー」

 金持ちだけあって家の掃除などは全部人任せらしい。

 

 そして、高層マンションの最上階にあるペントハウスの敷地に着地した。

 ここがヒメノの実家だ。


(いつ見てもでっかい家……)

 

 何LDKなのかすらよくわからない。

 私はヒメノを箒から降ろした。


「今日はお疲れさま。ヒメノ」

「えー! 家に寄っていかないの? お茶くらいだすよ。泊まったっていいし」


「また今度ね」

「うそだー! 絶対、こないくせにー!」

 喚くヒメノに手を振って、私は魔法の箒に魔力を込める。

 箒が黄金色に輝き初めた。


(さてと、じゃあ家まで飛ばしますか)


「……なんで夜なのにそんなに魔力マナがあるの?」

「昼間のうちに充電チャージしてるから」


「電池じゃないんだから」

「ヒメノは月の光で魔力を補充するんだよね。いいよねー」

 月属性の魔法少女であるヒメノは魔力を夜に補える。


 太陽属性の光の魔法少女は、昼間にしか魔力を貯められない。

 ちょっと不便。


「じゃーねー、ヒメノ。おやすみ」

「今日はありがとうね、マホヨ。あ、そーだ」

 ヒメノが私の首に腕を回し、頬に「ちゅ」とキスをする。


「魅了の魔法少女からのキスね☆ 幸運値がアップするから。きっといいことあるわよ」 

「光の結界が状態異常を無効化しちゃんだけどねー」


「状態異常ちゃうわ!」

「あはははっ!」


 私は笑いながら、魔法の箒を一気に急上昇させる。


 上空には真ん丸の月。


 今夜は満月か。


 足元には東京の夜景が広がっている。


 明るい夜空の中、満月と東京の光に照らされる。


(魔法少女を卒業したらこの景色も見納めなんだよね……)


 それはちょっと惜しいかも。


 私はいつもよりのんびりと空の散歩を楽しんだ。

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