縋りつく

 月も星も雲に隠れた夜道を歩いていると、ふとあの日を思い出す。


 住宅街とも繁華街とも言い難い、駅から少し外れた路地で、自動販売機の光に照らされた、血の気の通わない白い腕、落ち窪んだ目をしたなにかに纏わり付かれる様に、足を取られる女性の姿。


「縋りつかれるなら、イケメン以外認めねぇっつ―の!」


 コートが翻るほどに勢いよく蹴っ飛ばし、しがみつこうと伸ばされた手をがんがん踏みつけていた彼女は元気だろうか。

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